食欲というのはささいなことでなくなったりする
「!?」
「…!?」
オレも宇佐凪も息をのんだまま凍りついていた。
1つの肉まんに2つの唇。
唇と唇の接触をふせいでいるのも肉まん。
つまり…肉まんが現在中心ということである。
宇佐凪と目が合う。
正直そらすことができなかった。
宇佐凪はとても驚いているがオレもおそらくそんな表情をしているのだろう。
頬が赤いのもきっと同じ…。
「・・・」
「・・・」
お互い何も話さずただじっと見つめあう。
……。
先に行動をおこしたのは宇佐凪だった。
宇佐凪は肉まんをくわえたまま立ち上がる。
ちょっと後退。
そしてオレの背を向け正座。
ちなみにそのときすでにオレは宇佐凪に背を向けてあぐらをかいていた。
「えっと……ゴメンね?」
「えっ?あ…いいよ…こっちこそゴメン…」
…どっちもあやまるばかりで話が続かない…。
…………。
「「あっ…あのさ!」」
オレと宇佐凪がほぼ同時に相手の方へ向いた。
「……!」
「…!」
ふたたび目があい、オレたちはお互いに背を向け合う。
何でいつも同じクラスで仲良く話してるやつと2人きりだとこんなことに…。
ただこの空気は正直今あってはならない。
体育倉庫にいる時点でこの状況は正直……やばす。
「…とりあえず…オレは…夢の〜中へ〜♪」
オレは無理に明るく言ってマットに横になった。
宇佐凪が何をしているかは見えなかったが何かオレに言ってくる様子はない。
とりあえず次起きたときにはきっとキレイサッパリなはずだ。
脱出を考えるのも手ではあるが何度も言うが閉じ込められている側にそういう権利はない。
今オレにできること…。
体育倉庫の片付け?いやめんどくさい。
この機会をのがすな?別に機会とは思ってないしな…多分……。
食べる?そのせいで今事件が起こったんでしょう…。
今オレにできること…。
それは今起こったことを紛らわせることでしかない。
っということで…おやすみなさい。
…………。
そういえば…腹の虫が止んでいることに今気づいた。