がっくり、だったりする
鐘の音が鳴り響く。
それと同時に男女問わず生徒たちは席から立ち上がった。
皆が向かうのは食堂。
ちょうど4限目が終わったところだ。
だがオレはどうにも立ち上がる気にはなれなかった。
それはそうだろう。
まさかあんなあっけなく最後の一日が終わってしまったのだから。
今では宇佐凪と恥ずかしくて顔も合わせられない始末。
最後に何かがあるのはアニメやゲーム、2次元の世界だけってことか…。
リアルでそんな単純なこと…起こるワケ…ないよな…。
「はぁ〜」
意味あり気なため息をつく。
それは当然「意味がある」からだ。
昨日、それはもう思い出したくもない悲惨なことだった。
―――――――あの日あの時間あの場所であの時
「あ〜え〜あ〜うーんとぉ…」
2人しかいないと思っていたのに聞こえてきた「人」の声。
オレと宇佐凪が驚いて声のほうを見ると…体育倉庫入り口、というか扉。
1人の男性、というか男子?がオレたちを見て悩みながら立っている。
男子?というのは訂正、立派なここの高校の生徒だ。
ただ特徴として公共機関を半額で利用できる、ほどでもないが身長が低い。
なによりも大きく開いた瞳は幼さを連想させた。
それがミヤである。名前が宮戸なので略してミヤ。
どうやらミヤが明日の体育のために何か体育倉庫に用事があったようだ。
さすがしっかりした体育委員、ちゃんとしてる。
そこらへんは数秒で理解できた。
宇佐凪はただポカンと口を開けていた。
だがすぐに立ち上がるとミヤに近づいて行く。
「ミヤのバカバカァ〜!!もぅ〜!」
と言うと足早に体育倉庫から出て行った。
いきなり怒られ消えた宇佐凪の一言に若干固まるミヤ。
普段そんなことを言われないしね。
それを見て少し落ち着いたオレはミヤにたずねた
「ミヤ…いつからここにいたの?どのあたりから?」
するとミヤは少し空を見て考えた後
「うっさー(宇佐凪のこと)が泣きかけたあたりから…かな?」
………結構前じゃねーか…。
何で気づかなかったんだろう…!
別にミヤが影薄いわけじゃないし…。
今夕方だし…。
あっそういえば告白……っされたときやけに夕日強いなとは思ったよ…?
今考えてみればミヤが体育倉庫開けてるし背には太陽ぴったりあるしな…。
なんてことだ…これじゃあほんとに聴覚がないじゃないか。
せめて扉を開ける音くらい聞こえてくれよオレ…。
「…気づかなかった」
「うんほんとに気づいてくれなくてちょっと悲しかったよ」
少し苦笑いしながらミヤが言った。
そのあたりからいたなら声をかけてくれと言いたいところだがそれは抑えておこう。
ある意味ミヤはオレたちのことを考えてくれていたんだろう。
だがやはり体育委員保険係、そういうあたりにはしっかりしてたみたいだ。
「とりあえず家に帰ったら?ご両親心配してたよ?」
「…………ウソだな」
「あーうんウソだね。ぶっちゃけるとニコニコしてたよ。
『今日は純がいないからタップリエンジョイできる』ってね」
なにをエンジョイだよ…とツッコみたいがツッコんでいい場所ではない。
オレはとりあえず体育倉庫から出てミヤに漢…男だけの約束をして家へ戻った。
幸いながら両親はエンジョイはしてはいなかったようで
「お帰り」と気安く出迎えてくれた。
多分嘘八百というところだろう。
きっとそのときミヤはとんでもなく混乱してたんだろうね。
まったく悪戯が好きな両親だ…、そんなことをなぜか親に思ってしまう。
まぁこっちもエンジョイしてなくて良かったと内心思ってたからね。
………………そんで今にいたるワケで…。
その間特に何もなかった。
宇佐凪さんから電話やメールがくることもなかったし今もまだ言葉を交わしてもいない。
何だか青春みたいだな…高校生にもなって…。
まったく…。
「はぁ…」
オレは再びため息をついた。
後悔をしているワケではない、と言えばウソになる。
だがまぁ何事も時間が解決してくれるんだろう。
窓から見える景色は雫の涙だった。
ひじをつきながらふと思う。
まるで宇佐凪だな…。
笑った顔、悲しむ顔、怒る顔、曖昧ではあるが思い出せる。
………………………ふぅ……。
あと少しで…鍵に手がとどいたのにな…。
そう、オレは歯車を回すことができなかった。
鍵に手が届かず……失敗した。
ふぅ…。
もう…昔のことなんだよ。昨日のことだけど…。
終わったことをいつまでくよくよしてるんだ前原純!
お前はそんなやつじゃないだろう?
………そう…今考えるのは、後悔することじゃない。
このまま宇佐凪と話さなくなって終わってしまうのはダメだ!
トゥルーエンドを狙った覚えなんてあるもんか。
こんなバッドエンドの筋書きなんて必要ない。
ただ…普通のエンドでいい。
もとに戻るだけでもいい。
振り出しに戻すことくらいオレだってできる…!
―――――だが…………
次回最終回!
果たして前原純は宇佐凪千恵といつもの関係に戻ることはできるのだろうか!?
波瀾万丈なバッドエンドをお楽しみに♪