そして鈍感はやっと気づいたりする
少し強引にしすぎましたかもです^^;
「早く言ってくれ…」
「む〜〜〜」
宇佐凪がうつむきながら考えている。
「…………」
「む〜む〜む〜…」
中々覚悟がまだできていないようだ。
ちょっと我慢の限界がきそうなので…。
「………早くしてくれないか…」
「もうちょっとこのまま考えさせて…」
オレもだけどするのは初めてだろうね…。
でも頭で理解するよりこれは直感のほうがいいとは思うのだが…。
「悩んだらもう終わりじゃない?」
「ダメだよ悩まないと後で後悔しちゃうでしょ」
「そこまで必死に悩まなくてもパパッと言っちゃえばいいじゃないか」
「パパッと言ったら前原クンおもしろくないじゃない」
「パパッと言ってくれないとこっちも楽しめないんだけど…」
ビクッと宇佐凪の体がはねる。
「ぁぅ…で…でもぉ〜」
オレは指を3本立てた。
「はいあと3秒!」
「えぇええ!」
「3、2」
中指を折りたたもうとしたところで宇佐凪が
「わ…わかったよ…言うから…」
と覚悟を決めたようだ。
「はやくはやくー」
さっきまで結構スラスラ進んでたんだけど…。
流れはずっとオレがつかんでいた…が。
少しずつ宇佐凪もオレを押してきている。
やっぱりココは重要だから几帳面な女性は悩むのだろう。
ココこそ一番大事なところだ。
まだ言わないのか……。
気づくと、言うと言ってから1分ほど経過していた。
だがさすがに時間切れで強制は嫌だったのか宇佐凪は口をひらく。
「…………横5マス縦2マス……」
オレは頭を回転させた。
横5マス…縦2マス。
「……そこオレの置いてあるんだけど」
「えええぇぇぇ!!待った!!」
「待ったなし〜」
「うぁぁぁ…なんてことだ…」
「お前はこういうの苦手みたいだね」
宇佐凪は疲れ果てたようにバタリと倒れこむ。
「ぁぅぅ…やっぱり頭の中で『オセロ』なんて私には無理…」
「ははっ…オレも結構曖昧な覚えだったけどね」
…………………。
そう…オレたちは脳内オセロ…略して脳オセ…いや…脳内オセロをやっていた。
結果的に宇佐凪の記憶力不足で勝利してしまったワケだが…。
やっぱりオセロ盤とかが体育倉庫にない(というかあるワケがない)と正直暇なもんだ。
何で2日間何もせず過ごせたのかが不思議なくらい。
3日間で体育倉庫生活も少し慣れてきたせいかな〜…。
…っていかんいかん何で慣れちゃうんだよ…もう二度とない生活なのに…。
…ないかどうかはともかくもう二度とこんな生活はしたくないね…。
「あのさ前原クン」
宇佐凪が突然オレに話しかける。
オレは一瞬驚いたもののすぐに冷静さ(?)を取り戻した。
「ん?」
「あのさ…何か…他にすることとか…ないの…?」
やけにもじもじしながらオレに近寄る。
「な〜にぃ…何か期待してんのー?」
「き…期待なんて!し…してないよ!!」
おもしろ半分で言ったことに宇佐凪はひどく動揺して首を振った。
子供らしい…というか……なんというか…。
かわいらしい素振りではあるなぁと思う。
もちろんその行動をする人によるが…。
「オレたち親友だろ?一緒に生きてここを抜け出そうぜ!」
沈黙する宇佐凪。
しばらくして口がひらいた。
「明日…誰かに助けてもらって…それで…終わりなんだよね?」
「ん〜まぁそういうことじゃないとこっちも困るしな」
「そ…そだよね」
喜ぶべき場面で悲しむ宇佐凪。
なぜ?分からない…
ただ悲しませ続けたくはない。
「何か…困ったことでもあるの?」
このときオレは本当に鈍感だったのかもしれない。
そう…それは彼女を泣かせてしまうほどに…。
「いや…ただ、ただ…!」
泣き出す宇佐凪。
だが昨日とは違って鳴くことはせず、静かに泣いていた。
オ…オレ…何かひどいことでも言ったのか…!?
と…とにかく謝っておこう!
「な…何したかは知らないけど…ご…ごめん…」
「何したかじゃないよ…。いい加減…。 気づいて…ほしかったなって…」
「え?」
疑問符を浮かべたオレを見て宇佐凪は無理に微笑んだ。
目からはまだ雫がこぼれそうにたまっている。
「やっぱりまだ分かってないんだね」
分からないことを分かると見栄を張るのはよくない。
そう思ったオレは2つ返事で返した。
「……………うん……」
オレがそういった瞬間宇佐凪はオレを押し倒す。
若干の驚きと痛みに目を閉じるオレ。
目を開けたときには宇佐凪はオレによつばいに乗りかかっている。
「な…なにをする気…って聞いてもヤボ…か」
最終防衛ライン突破されてしまったか…。
「前原クンが悪いんだよ…!いつもいつも…私の気持ちに気づいてくれなかった…!」
オレを攻めているのに力のない言動。
だがオレの心にはとても衝撃がはしった。
思い返せば昨日までの2日間はやけにわざとらしいところがあったかもしれない。
一瞬宇佐凪がオレを好きかもしれないということも考えた。
親友。
今その親友がオレの上に…いる。
何で今まで気づかなかったんだろう。
いや…本能では気づいていたかもしれない。
だが理性、生きていく中でほとんどの感情を制御する理性にその感情は打ち消された。
今やっと…理性にも本能が悟っていたことが分かったようだ。
宇佐凪は泣きながらもオレの腰あたりに座る。
「私…」
もう次にどんな言葉が発せられるのかは大体予想がついていた。
宇佐凪だってオレがそれを分かって言おうとしていると思う。
親友、宇佐凪千恵、今その親友からありえもしないような言葉が発せられる。
オレには選択肢が2つある。
もちろん…もう決めてあった。
もし告白されたら、と返事の準備はもうとっくにできているつもり。
いざとなれば2つ返事をしたってかまわないのだから…。
「私…前原クンのことが!!」