最初は嫌だったけど今になると惜しく感じたりする
「うにゃ?今何時何分何コンマ何秒」
宇佐凪が寝ぼけた顔をしてオレに聞いた。
コンマってムリだし…。
そこらへんはてきといでいいか…。
「7時6分28コンマ1秒でした」
「何で過去形なのさ」
「だって『7時』って言い始めたのがコンマ1秒だから言い終わったらそうじゃないだろ?」
「だったらしゃべる時間も計算にいれといてよ。しかも時間違ったし…」
「オレはそこまで体内時計鋭くないがお前分かるのか?」
「うん分かる。8時3分45コンマ4秒」
…………本気か…?
「………ウソだよな?」
「うんウソ」
オレに笑みを見せる。
一瞬本当にびっくりした…。
「ビビッたわ…マジで…」
「実はウソっていうのもウソだったりして?」
……なぬ?
「つ…つまり…あなた様の体内時計は…」
「うん最強だね最強」
「………………」
思わず黙り込む。
「うん?どしたの?」
こいつは…こいつは…!
何で…何で…何で……何で…!
「何で先に言わなかったんだ!?」
突然の一言に宇佐凪は一瞬硬直する。
そして少し考えた後。
「う〜んいらないかな…と」
と言った。
「いるわぁ!これまで時間分からず2日苦労してたのに…。
お前は今何時だとか分かって…楽だったのかぁぁ!」
「うん!」
宇佐凪は邪を知らない少女のような笑みをうかべた。
…………はぁ…。
ムリ…説得はできそうにありませぬわ。
ちょっと攻めるもすぐ諦めたみっともないオレ。
体内時計くらい!
れでぃーふぁーすとでいこうじゃないか!
「前原クン開き直ってる?」
何を見てか宇佐凪はオレ心を予想した。
オレは横に大きく振る。
「まっさか!開き直ってなんかぁー…」
…………………。
「前原クン?」
切羽詰るとはこのことか…!?
宇佐凪はオレの顔をじろじろとながめてくる。
「ねぇ前原クン?」
…………白旗…。
「開き直ろうとしました…」
「よしそれでよし!素直でいい子だ!」
宇佐凪はポンとオレの頭に手をのせた。
羞恥と悲哀…。
その両方を頭をなでられる度に感じる…。
開き直ろうとしてその隙間を突くのはなしだと後々思ったワケだが…。
そういえば今日が最後の…1日なのか…。
別に何もせず、起こらず終わって欲しい。
そう…願っている…はずなんだ。
まぁ…いまさらだがオレは男なんだ。
そういう疑心感をいだくのは当然だろう。
『童貞』だしさ…。
理性と本能の願いなんてほとんど正反対みたいなものだし。
ただ高校生として、理性として、今日何事もなく終わることを願う!
そして残り約16時間本能&宇佐凪との戦いがはじまった。
この結末は…オレでも分からない。