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触ったキノコに祟りあり、だったりする【後半】

「ねぇ…前原クン?」

「な…なに…?」

「人間には三大欲があるって知ってる?」

「三大欲…?まぁ保険で習ったからいちを知ってる」

「食欲、睡眠欲、そして性欲だねぇ。

食欲と睡眠欲はないと人は死んじゃうけど性欲はなくても死なない。じゃあ何であるの?

ねぇ…何で…?」

宇佐凪は小学生になったようにオレにたずねた。

たずねた、というか…確認してきた。

「な…何でって…それは…その…」

分かっている、分かっているけど口にできない。

オレは宇佐凪から目を逸らした。

それを見てか宇佐凪はニヤリと笑みをうかべて言う。

「今…変なこと考えてたでしょ?」

「うぇ!?違っ…」

「いいんだよ、性欲なんていわれたら思いつくことは1つしかないもんね…」

「…………。」否定はできなかった。

「でもね性欲っていうのはコミュニケーションの1つなんだよ?

普通は言葉と言葉とかだけど…これは…ね?」

オレに顔を近づけて強引に目を合わさせられる。

しかも逸らせない。

「今ココで…コミュニケーションの練習でも…しない?」


ゴクリ…


体育倉庫なんてものに閉じ込められたらこれくらい、起こることはわかっていた。

何かを…期待していた?

何かを…望んでいた?

何かを…想っていた?

期待していた、望んでいた、想っていた。

何を?

こうなることを?

これが性欲であるならば今オレは本能をむき出しにせんばかりだ。

だがこれはオレの考えであって宇佐凪の考えではない。

宇佐凪が本当にこんなことを期待しているのか?

宇佐凪が本当にこんなことを望んでいるのか?

宇佐凪が本当にこんなことを想っているのか?

もしここで…宇佐凪と…?

………何でここまで不安になるのかな…。

すごく不安。

何か…すごく…。

……ダメだ。

「ごめん…」

「えっ?」

「ゴメン!ダメ!それはムリ!」

とオレは宇佐凪の肩をつかんでズルズルと押していく。

宇佐凪をマットまで下げるとオレは自分のマットへ戻った。

そして再び正座。

だが宇佐凪は見ない。

顔を下げて…宇佐凪を見ない。

「何で…?前原クンは私のことキライなの?」

「そういうワケじゃないけど…」

「じゃあ何で…」

「だってこんなことになったのはキノコのせいじゃないか。

オレだって望んでなかったしお前だって…」

「…私は……私は……別に良かったのに…」

宇佐凪が若干震えた声を発した。

そして突然…泣き出した!

「うわぁぁぁん!」

驚いて顔を上げるとそこには涙を必死に手でふいている宇佐凪がいる。

だが何か大げさじゃないか?

進展もやけにはやすぎたし。

というか最初から大げさじゃなかったか?

……まさか!?

まさかとは思うんだけど……。

酔ってる!?

先に気づけばよかった…確かに若干酒臭かったな…。

「ちょっと!大丈夫か!」

「前原クンのばかぁぁ!どんかぁぁん!」

泣きながらオレを攻める。

泣かしちゃったのか…酔ってるけど。

「あぁゴメンゴメン。悪かったから」

オレは宇佐凪に近づき肩に手をまわした。

「ばかぁぁ」


バッ


宇佐凪はオレにボディアタックをかました。

片膝をついていたためその体勢は簡単にくずれていく。

…………。

「…!」

オレがあおむけで倒れている上に宇佐凪。

胸板に顔をうずめている。

「えっと……宇佐凪さん?」

何と言えばいいのか…。

「うああぁぁ!」

…さすがに…抵抗は…できないか。

オレは静かに宇佐凪の頭に手をのせ、なでた。

「……!」

宇佐凪が一瞬泣くのをやめる。

……………。

だがすぐに

「うああぁぁ!」

と泣きわめきだした。

オレは再び宇佐凪を頭をなでる。

「泣きたいとき、泣けばいい。泣いて泣いて、それでいい」

そう言うと宇佐凪はヒョコッとこちらを見た。

目が涙ぐんでいる。

「う…うん…」


 それからしばらく宇佐凪は泣き続けていた。

思い切り泣いて、思い切り泣いて、思い切り泣いて…。

さすがに泣いた後はやっぱり眠たくなるようで泣き止んだかと思うともう寝てたり…。

多分酔っていたこともあってかなり爆睡している。

じゃああの白いネバネバは…アルコールの入った…「何か」

まぁとりあえずキノコ事件はこれで一件落着というワケだ。

…もうあのキノコを一生見ませんように…。

お祈り。


「ふあぁ〜」

そういえばオレもずっと宇佐凪につきそってたから眠くなってきた…。

マットに横たわり天井を見る。

もう暗くて天井自体は見えなかったけど。

あと……1日か。

………………。

オレは若干涙と鼻水ですごいことになっている体操服を気にしつつ…眠るのであった。

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