My Name is HADESU
ドゴォーンッ‼
大きな銃声と共に僕の視界は暗転した。
『痛ッ』気が付くと、最初に目が覚めた廃墟の部屋で目が覚めた。痛いと思ったがやはり僕の体は無傷だった。見渡すと横には卑弥呼が座ってこちらを見ていて、オリヴァは元の姿に戻って僕の腰に巻き付いて寝ている様だ。
名前のない少年『何があったんだ?』
卑弥呼『....』
信長『おぉ、起きたか小僧ッ』
驚いて飛び起きた。おそらくさっき僕を撃ったのもこいつだ。
名前の無い少年『信長ッ』
信長『さっそく呼び捨てとはいい度胸じゃのう。』
名前の無い少年『別にあんたは俺の上司でも何でもない。何か問題でもあるのか?』
信長『う~む、確かに無いな。では良かろう。そこで貴様、俺の部下になる気はないか?』
いったい何を言っているのか?なぜ僕なのか?信長が言っている意図がわからなかった。
あの天下の『織田信長』が僕を部下に?本当に本人である信憑性は定かではないが、この鋭い真っ直ぐな鷹の目の様な眼差し。常人でないのはわかった。何も出来ない、持たない自分にとって正直少し嬉しいと思った。そして、このまま訳も分からぬまま死ぬよりはマシに思えた。
名前のない少年『なる。』
信長『ほう。では、貴様は我が軍に何を齎してくれる?何が出来る?示してみよ。』
いきなりそんな事を言われるなんて思ってもみなかった。僕に何が出来る?考えたが何も思い浮かばなかった。
名前のない少年『わからない。でも、あんたを世界統一まで導けばいいんだろう?』
信長『そうだな。あの謙信の馬鹿みたいに裏切らずにな。貴様に出来るのか?なぜにそう言い切れ
る?』
名前のない少年『わからない。でも、やる。あんたも俺に出来ると思ったから誘ったんだろう?』
信長『ㇵッハッ、やはり良い度胸をしておるのぉ。何も出来ぬのにハッタリか。』
信長は笑いながらも目は鋭いままでこちらを睨み、火縄銃をこちらに向けてきた。少しでも期待した自分が悔しくて、惨めになった。そして、戦争になる前に自分がやっていた事、出来ることを出鱈目に言って並べた。
名前のない少年『そんな事言ったってしょうがないじゃないかッ!僕にだって何が出来て、何の役に
立つかなんてわからないよ。出来る事といえば、上手い料理を作れる事多少空手と
いう格闘技をやっていた事、インターネットに少し詳しくて、人をまとめる仕事を
していた。多少の人の心理位はわかるつもりだ。』
信長『ハッハッハッ、思っていたより結構出来るではないか。なぜ最初から言わない?』
名前の無い少年『今の時代に俺より出来る奴は5万といるだろうし、本当に役に立つレベルかはわか
らないッからだ。』
信長『ハッハッ、自身がないか。しかし、安心しろ。今の世は皆死に絶えて人手不足じゃ。わしらを
蘇生させた科学者とやらも、同氏もみんな死んだ。生き残った者など、ワシの様な旧世代の人
間と、自分からは何もやろうとしない木偶の坊、℟uNa‐ルナとやらに骨抜きににされた家畜の
みよ。家康なんかはいつもわしの首を狙っておる。』
名前のない少年『じゃあ、なぜ僕なんだ?僕も周りの木偶の坊と変わらないはずだ。』
信長『確かにのう。あまり変わらない。ただなんとなくじゃ。強いて言うなら’’勘’’、気まぐれ
じゃな。あとは..聞きたいか?』
名前のない少年『聞きたい。』
信長『眼じゃな。』
名前のない少年『目?』
信長『おぬしの眼の奥は暗い。不満に満ちている。怒り、理不尽、憎悪、悲しみ、負の感情が隠れて
いる。そして、卑弥呼に殺されようとした時にそれが外に出た。それに呼応してオリヴァが変
態した。負の感情とはあまり良いものではないが、エネルギーになる。力になる。原動力にな
る。だから、試した。』
名前のない少年『それ、あまり嬉しくないですね。』
信長『まぁ、そう言うでない。負の感情があっても使い方を知らなければ意味がない。文句ばっかり
言って何もしない奴など、それこそ5万といる。だからわしが、何も持たぬおぬしにチャンス
をやろう。力の使い方、矛先を教えよう。主君の為に死ぬ覚悟はあるか小僧?』
名前のない少年『俺はもう死なない。あんたを世界一の主君にしてやるよ。』
信長『良かろう。せいぜい無駄死にだけはするでないぞ。役に立って立派に死ぬがよい。』
そうして僕は主君『織田信長』の部下になった。信長はそれから『やる事が山の様にある。』と言って部屋を出て行った。部屋に僕と寝ているオリヴァ、卑弥呼が残された。
卑弥呼『....』
名前のない少年『何をすればいい?』
卑弥呼『....』
気まずい。この卑弥呼という人は喋れないのだろうか?さっきまでの会話を聞かれてたのもあって、とても気恥ずかしい。沈黙がどれくら続いたのだろう。しばらくして、オリヴァが目を覚ました。
オリヴァ『卑弥呼ぉ、おはよう。』
卑弥呼『....おはよう。オリヴァ。』
蚊の鳴きそうな小さな声で卑弥呼がしゃべった。
名前のない少年『..え?..しゃべれる..の?』
卑弥呼『....』
オリヴァ『ハッハッ、こいつは人見知りだから、あんまり喋んねぇんだよ。』
ずっと緊張していたからか、『人見知り』という懐かしいワードに緊張の糸が切れた。
名前のない少年『ハッハハ、なんだよそれ。』
卑弥呼『あなた、名前、無いの?』
名前のない少年『あぁ、覚えていない。』
卑弥呼『不便..すごく..』
オリヴァ『そうかぁ?』
卑弥呼『オリヴァ。うるさい。常識ない。意味不明。』
オリヴァ『なんだとぉ卑弥呼ぉ、調子に乗りやがってぇ。』
名前のない少年『僕も名前がないのは不便だ。卑弥呼つけてくれないか?僕の名前。あと、オリヴァ
は黙ってて。』
卑弥呼『..え..困る..急に言われても..』
オリヴァ『つけてやれよぉ卑弥呼ぉ』
卑弥呼『じゃあ..ハデス..』
ハデス『ハデス?』
卑弥呼『家康様の見せてもらった外国の本に書いてあったの。死者が行く場所。あなたいつも死にそ
うだから..』
オリヴァ 『良い名前じゃねぇかハデス。良かったな。』
ハデス『あぁ、なんだか複雑な気持ちだが..ありがとう。』
それから卑弥呼に沢山の事を教えて貰った。
つづく..