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プロローグ

 

  朝日が顔を出し、紫がかった空を赤く染めグラデーションをつくりだした。街はまだ起きずに静かな空間に風のみが吹く。

  そんな街の中に1件、温かい明かりのついた家が建っていた。


「ん?……」


  リビングのソファーに座り少年が本を読んでいると二階の部屋から微かに音が聞こえた。

  少年は不思議に思い、机に本を置き、二階へ向かう。階段を上り少し長めの廊下を進んで行く。

  そうして近づくほどにだんだんと大きくなっていく音を頼りに、少年は二階廊下の1番奥に位置する『柚遥』と書かれた札の下がったドアの前にたどり着いた。


  少年はドアをすり抜けて部屋の中へ入る。

まぁまぁ片付いている女の子らしい部屋。 本棚や、巨大なぬいぐるみに囲まれて1人で寝るには大き過ぎるベッドが置かれている。

  ベッドには布団の塊…いや、布団にくるまった少女が眠っていた。


「んん……」


  少女は目を固く瞑っていた。それもそのはずだ。枕元で大音量で目覚ましがなっている。

 

「うるさいぞ、こいつが起きるだろ…」


  少年が目覚ましを止めてやると少女は気持ちよさそうに眠る。

  腰までくる艶のある黒い髪に透き通るような白い肌、世間で言う美人な顔立ち。

  少年が少女の前髪を横に流し顔を覗きこむと少女が手に擦り寄ってきた。

  少年はフッと笑い少女の頭を撫でる。

 

 しばらくして少年は部屋を出るとリビングへ戻ってソファーに座り一息つく。

  読んでいた本を取ると少年はふとさっきの疑問を思い出した。


  少年の疑問は決して音の原因ではない。

  音の原因など少年は毎日のように聞いているから分からないはずがない。

  実はこの行動は少年の毎日行っていることなのである。朝ご飯とお弁当を作り、できた頃、つまり目覚ましが鳴り出した頃に少女の部屋へ行き、目覚ましを消して少女を起こし、一緒にご飯を食べて学校の校門まで見守るまでが少年の毎日の習慣であり、義務だと思っていることだ。


つまり問題はそこじゃない。なんの音かではなく何故なったかだ。

  いつもなっているとは言え、今日は日曜日で学校はなく、しかも今は朝の4時半頃。

  休日はだいたいお昼に起きてくる少女のことを考えたら、こんな時間に目覚ましがなるのはおかしいのだ。


(彼氏とデート?……まさか…俺に隠れてか?…それとも友達と遊びに?……てか今日なんか用事あったか?…あったとしてもこんな早く…いやないだろ、今日はゲームの新イベもなかったはず……)

 

  思考をめぐらせるがなかなか答えが見つからない。


「とりあえずなんかあったら可哀想だから起こしてやるか」


少年は天井をすり抜け少女の部屋へ行くと、少女はまだ眠っていた。


「おい、起きろ柚」


「んんー……あと5分」


揺さぶりながら起こすが全然起きる様子はない。むしろさっきより布団を深く被って寝てしまった。少年が布団を剥がそうと引っ張ってもビクともしない。


「おい、いい加減起きてくれ」


「うん…もう起きるよ…あと30分……」


「おう……ん?…増えてんじゃねえか!いいから早く起きろ!」


「んーじゃあ起きない……」


「は?」


少年はとうとう布団を引っ張るのを辞めて

ベッドの脇に座る。すると途中から起きていたのか、布団の中からまだ眠そうな少女が顔を出した。


「やっと起きたか」


「お兄ちゃん、今何時?」


「4時」


少年は少女にスマホの画面を見せると少女はムッとしながら体を起こした。


「まだこんな時間じゃない!なんで起こすのよ!」


「さっきお前の目覚ましなってたんだよ!てかなんでこんな時間に」


アラームのアプリを付けて少女にスマホを渡す。


「あ、朝と昼の4時間違えた……」


「え?……」


(俺がさっきまで考えてたことはなっだったんだ……)


「とりあえず起きたんならプリン食べるか?」


少年は少女の頭を撫でながら聞いてやる。


「食べる…」


少女は機嫌がなおったのか、布団で顔を半分隠し、少年につぶなら瞳を向けた。


*****


少年の名はかんなぎ しゅん

一応高校二年生。ある日、妹を庇って死んでしまったが、死後も妹が心配で現在妹の背後霊!誰かがいるところでは隠しているつもりでいるがかなりのシスコンである。容姿は整っており、死ぬ前はモテていたが本人は気づいていない。


少女の名は(かんなぎ ) 柚遥(ゆずは)

隼の5つ離れた妹で中学一年生。隼と双子だと思うほど似ていて、文武両道の完璧美人。隼の姿が見える数少ない中の1人。


*****


隼はリビングへ帰ってくると、早速キッチンへ入りプリンの準備をした。白に赤とオレンジの花のラインが入ったお皿、スプーン、

お皿とお揃いのティーカップを出し、冷蔵庫から昨日の夜に作っておいたプリンを取り出した。


「この作業が1番緊張するな……おおー!我ながらいい出来じゃないか!美味そう」


プリンの綺麗なできに隼が喜んでいると、

布団とぬいぐるみを抱えた柚遥が頬を膨らませて立っていた。


「それ私がやりたかったー!」


「とりあえずそれ置いてこい、そしたらやらせてやる」


「分かった」


柚遥は椅子にぬいぐるみを座らせて布団をかけると走って戻ってきた。


「置いてきた!」


「まーだだ、髪結んで手ー洗ってこい!ついでに顔も洗ってこい!」


「えーー」


「えーじゃない!さっさと行ってこい、あと帰ってきたら紅茶入れてくれ、お前の役目だろ?」


隼は微笑んで柚遥の頭を撫でる。


「じゃあ、頭やってくるからお湯沸かしといてね!」


「りょーかい」


柚遥が走って洗面所に向かうのを見送ってポットに水を入れ、スイッチを押しておいた。

ちょっとして柚遥が鼻歌を歌いながら戻ってきた。


「どうした?」


「別に〜」


「それなんの歌?」


「いいでしょ別に!それより早く!」


「あぁ、冷蔵庫の2段目」


赤くなった顔を隠すように冷蔵庫を開けた柚遥の顔はだんだんと青くなって行った。


「お兄ちゃん……」


「ん?どうした」


「これ何……」


「あ?プリンだろ」


柚遥は大きくため息をつき、大量のプリンが乗った皿を冷蔵庫から出した。


「こんなに食べるの?……」


「そんなこと言って」


テーブルにフルーツと生クリームが添えられたプリンと紅茶を並べる。


(完璧だな)



数分後…


「そんなに食べるのとか言ってたやつはどこのどいつだろうな」


用意されたプリンは跡形もなくなくなっていた。


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