IF:第六話 ユージや掲示板住人たち、それぞれの行動:建築班
だいぶ尾籠な話ですが……
苦手な方はスルーしてください。
「はーい、じゃあ建築班はこっちに集まってね! あ、サクラさんとアリスちゃんも!」
「ねえねえサクラおねーちゃん、アリス、なにすればいい? アリスたくさんお手伝いできるんだよ!」
「ふふ、アリスちゃんは偉いね。とりあえず、私と一緒に外に出ようか」
ユージとアリスとコタローが暮らす家に、キャンプオフ参加者たちが集団トリップしてきた日。
昼食を終えて、32人と一匹は各班に分かれて行動を開始していた。
ユージの妹のサクラとアリスは、名無しのトニーが率いる建築班だ。
アリスがこの班になったのは、土魔法に期待してのことだろう。
アリス、サクラ、名無しのトニーのほかに、建築班となったのは7人。
あわせて10人が、今日の建築班であった。
コテハンなしの名無しが4人、まだコテハンにしてないんだけど今後はこう呼んでほしいと名乗った「湖の街らしい」と「爬虫類バンザイ!」。
それと。
ああ、生アリスちゃんはかわいいですねえ、と微笑みを浮かべる男。
YESロリータNOタッチである。
この班分け、大丈夫か。
「アリスちゃん、ちょっと聞いてもいいかな?」
「うん、おじちゃん!」
「お、おじちゃん……ま、まあいいや。アリスちゃんが住んでた村では、トイレってどうしてたか知ってる?」
「うん! あのねえ、といれはお外にあって、穴にするの! それで、草でふくんだよ! もやしたらくさくなくなるんだって!」
「あ、穴……聞いたかお前ら! この先、快適に暮らせるかどうかは俺たちにかかってる! がんばるぞ建築班!」
名無しのトニーの声かけに、応ッ! と答えが返る。
引きニートやらニートやらが多いのに、いつになく気合いが入った答えである。
まあ当然かもしれない。
ユージの家には、一階と二階にトイレが一つずつある。
合わせて二つ。
一軒家としては充分で、アリスとコタロー、二人と一匹で暮らすには充分すぎる数だろう。
だが。
ここに、30人が追加されたのだ。
どう考えてもキャパオーバーである。
毎朝壮絶な戦いが繰り広げられることになるのは確定だ。
そしてその煽りを食うのは、当然、住人でも女性でも幼女でもないニートたちである。
トイレを作る。
気合いが入るのも当然だ。
「あのねえ、アリス、まほーで穴をつくれるんだよ!」
「そっか、すごいねアリスちゃん! どこに作るかは……もうちょっと待った方が良さそうね」
アリスは、手を繋いだサクラを見上げてお手伝いできるアピールしている。
サクラ、直接会った初めての日にしてすっかりアリスのかわいさにやられているようだ。
「ちょっと離れることになるけどしゃあないだろ。むしろ近いと臭いが……」
「待って、処理どうするの? そのへん決めてからの方が良くない?」
「アリスちゃんが……外で……トイレを……?」
「単純な穴でいくか、肥溜めを作るか、コンポストを使うか」
「ユージの家の下水道に繋げればなあ。流し入れる場所を作ればそれでよさそうなんだけど」
「おい待て、一人危ないヤツいたろ」
名無しのトニーを中心にワイワイと話し合う男たち。
一人二人、あるいは短期間のことなら、持ち込んだ携帯トイレやキャンプ用のトイレセットを使えばいい。
かさばるのに山のように用意されたトイレットペーパーも、少人数なら足りるだろう。
だが、ここで作ったトイレは30人弱の人間がいつも使うことになるのだ。
建築班の使命は重大かつ急務である。
話し合いに変態が一人混ざっていたところで無視するしかない。大丈夫か。
時々サクラが意見を求められ、アリスの助言でトイレットペーパー兼消臭剤になる草を見つけて、検分して。
8人の男たちの意見はまとまったようだ。
「うん、それが無難だね。最初はスピードを重視して、穴と目隠しと屋根だけの簡単なものを。最終的には大と小を分離してコンポストも使う。で、この時は横の壁も足下も屋根も、ちゃんとしたものを作る」
「な、なあ、その穴って、雨が降っても大丈夫か?」
「うーん、ちょっと盛り土しておくか、最初から高い場所に作るかかなー。それにほら、普段はがんばってそっちを使っておいて、雨とかキツイ時は持ち込んだ携帯トイレ使えばしばらくイケるでしょ!」
「お、おおう、トニーは前向きだな……」
「くっそ、業者さん呼べれば! それか経験者がいれば! ユージの家の下水道に繋げば解決なのに! 車庫あたりにトイレ作ってさ!」
「そう言うなって。俺たちでもやればできるんだろうけど……ユージの家のライフラインが動いてる理由はわからないんだぞ? 変に手を出して動かなくなったら……」
「うわ、マジで大惨事! しかも水道とか電気とかネットに影響したら悲惨すぎる!」
異世界トリップ、しかも城や街ではなく森への集団トリップ。
建築班は、たいていの物語には描かれない最大の問題と戦いはじめるのだった。
「土さん、ちょっと下にいってー!」
「すごいわアリスちゃん! これが魔法ね!」
「うおおおおおお!」
「魔法、魔法きましたー!」
「アリスちゃんの生魔法……私がプレゼントした服で……私、生きててよかったです……」
「黄昏よりも昏きもの、血の流れより」
「黙れ! ここじゃ、んんーってやってぐぐーってやってえいっ! なんだよ!」
「おう、変態は近づかないようにな? NOタッチだぞ?」
ユージの家のまわりの、やや高くなっていた場所に土魔法で穴を掘るアリス。
最初にサクラに、続けて男たちの喝采を浴びて、アリスはノリノリだ。
同じ魔法を同じ場所に、何度も使っていくアリス。
気がつけば、穴はずいぶん深くなっていた。
「よし、穴はOK! あとは囲いをつく……おい、いまの音」
魔法を使うアリス、付き添いと護衛としてアリスの横にいるサクラ、指示を出す名無しのトニー。
残る7人の男たちは、ぼーっと見ていたわけではない。
現代日本で生きてきた男たちにとって、丸見えで用を足すのはツラい。
女性のサクラと幼女のアリス、コタローはユージの家で生活するため、外で暮らすのは男だけだとしても。
男たちは、見られながらすることに抵抗があったのだ。まだまだである。サバイバル的に、変態度的に。
ともあれ、残る7人の男たちは、腰までの高さの壁を作ろうとしていた。
持ち込んだ木材を使うこと、しっかりした作りじゃなくても問題ないことから、作業は順調に進んでいた。
素人ばかりでもなんとかなっているようだ。
だが、ワイワイ騒いで、時にアリスのかわいさに癒される平和な時間はここまでだった。
「サクラおねーちゃん、いまのはなんの音? まほーかなあ?」
「ううん、アリスちゃん。今のは魔法じゃないんだ。たぶん銃の音ね」
森から、銃声が聞こえたのだ。
「サクラさん、アリスちゃんを連れて謎バリアの中に入ってください。俺たちも門の前に移動します」
いままでトイレ作りを指揮していた名無しのトニーが、すぐにこの場を離れるように指示を出す。
「みなさん、落ち着いてください。銃声はまだ距離がありました。それに……いざという時は、私がアリスちゃんの盾になりますから!」
やや怯えた様子の男たちに言い放つ男。
言葉だけを聞けば、なかなかいいことを言っている。
実態は単なるロリ野郎だが。
YESロリータNOタッチ。
実は北海道出身のこの男、銃声を聞いたことがあるのかもしれない。
あとどうやらロリっぷりはポーズではなく、本音であるようだ。
何かあったらアリスの肉壁になる覚悟がある程度には。
ちなみに。
アリスもサクラも、冷静に謎バリアの中に向かっていた。
身近に危険が存在する場所で暮らしてきた二人は、パニクることなく行動に移せたようだ。
「けっこうエグかったな……」
「これから、アレが俺たちの日常か」
「アリスちゃん、土魔法に続いて火魔法まで! 初日からついてますね!」
「おおう、変態は単純でいいな……早いとこ位階を上げてえなあ」
「なあ、モンスターの死体を処理する場所も必要なんじゃね? でかい穴でも用意しとく?」
銃声は、探索組がゴブリンを倒した音だった。
銃弾、バールのようなもの、金属バットで殺されたゴブリンたち。
モンスターといえど、ゴブリンは人型である。
作業を中断して集まった建築班の面々はどん引きであった。
死体の処理のために披露されたアリスの魔法に興奮する一人の男を除いては。タフすぎか。
アリスがモンスターの死体を燃やした後も、建築班の作業は続く。
途中、開拓班の一人が運転するハ○エースで、玉切りした木材も運ばれてきて。
「よーし、今日はここまで! 屋根は骨組みだけど、明日葉っぱをかぶせる方向で! ベニヤも節約しないとね!」
ひとまず、穴を掘って周りを囲っただけの原始的なトイレが完成したようだ。
こうして異世界トリップを果たした建築班の、一日目が終わった。
予想以上に苦戦しそうなトイレ問題に直面しながら。
アリスの土魔法が予想以上に効果的なことがわかったのは収穫だろう。
とりあえずアリスに続く魔法使いの出現が待たれるものである。
30才を越えてDTな男たちはいるが、本当に魔法を使えるわけではないので。
次話、11/22(火)18時アップ予定です。
※10年ニート本編に投稿している三話分のIFルートに関しまして
本編側と重複投稿となっている三話分は、11月末日に削除します。
本編は完結済みとして、今後、IFルートはこちらのみにアップします。
ご注意ください。





