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【IFルート】10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた【集団トリップ】  作者: 坂東太郎
『IF:第九章 ユージと掲示板住人たち、全員で異世界の街へ行く』

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IF:第二話 ユージと掲示板住人たち、全員が異世界の街に到着する


「あ、みんな、ちょっと待って」


「ユージ兄、どーしたの?」


 開拓村として登録されたユージの家とその周辺を旅立ってから三日目。

 森を歩くケビンとトリッパーたちに、ユージが声をかける。


「どうしたユージ?」


「コタローが何かに反応してる。モンスターかも」


 ユージとアリス、ケビン、30人のトリッパーたち。

 先導して歩くコタローは立ち止まり、耳と鼻をヒクヒク動かしていた。なにかいるわね、と言わんばかりに。

 ユージはそんなコタローの様子に気付いたようだ。さすが飼い主である。ユージが主なのだ。一応。


「護衛班、警戒体勢に入れッ!」「前方へ展開!」「ヤーヤーヤー!」

「ルイスくん、モンスターだって! 行かなくていいの?」

「やだなあサクラさん、チェーンソーでゴブリンを倒したら壊れちゃうよ」

「あ、そこは冷静なんだ」

「肉も骨も硬いからね! チェーンソーはゾンビ専用だから!」

「ルイス……」


 大騒ぎである。

 モンスターの出現はアトラクションか。

 探索班や強行偵察班は緊迫感を持っていたのに、人数が多くて気が大きくなっているのかもしれない。


「ゴブリンが五匹か。距離はある! 焦らずクロスボウで仕留めるぞ! ドングリ博士は不参加で!」


「クールなニート? せっかくドングリ博士がいるんだし、撃ってもらえばいいんじゃない?」


「ユージ、いまのところ弾の補充はできないんだ。節約しないとな」


「あ、そっか」


「護衛三班、構え! みんな、外さないことの方が大事だから! 狙いはお腹でね! 射てッ!」


 全員で街に向かうにあたり、周囲の警戒やモンスターが現れた際に主に戦闘を担当する護衛班が組まれた。

 五人一組で、六班。

 基本的には二班ずつ持ちまわりである。

 ちなみに軍人ごっこでノリノリだったのは、名無しのミート率いる護衛三班であった。


 遊んでいるようであっても、役割は果たすようだ。

 木々の先にいるゴブリンに、五本のボルトが放たれた。

 三匹が倒れ、腕に当たった一匹と無傷の一匹が向かってくる。


 ユージとトリッパーたちはケビンも含めて33人と一匹で、ゴブリンはあっという間に三匹倒れてあと二匹しかいない。

 それでも、ゴブリンは逃げないらしい。

 この世界におけるモンスターは、野生の獣とは違うようだ。


「第二射、構え!」

「あ、ごめん、俺うまくセットできなかった」

「よし! じゃあ四人で構え! 射て!」


 ゆるい。

 ゆるいが、ゴブリン程度には充分なようだ。

 なにしろ全員揃えば、ワイバーンさえ倒したので。


 二匹のゴブリンも倒れた。

 接近戦をするまでもなく完勝である。


「よし! クリア!」


「待てミート、まだクリアじゃない。死んでるかきちんと確認しないとな」


 クールなニートの発言に、ギョッと振り返る名無しのミート。

 もっともな言葉ではある。

 平和な世界から来たのに、そんなことを言えるかどうかは別として。


「え、えっと……」


「私が行きましょう。みなさん、生死には慣れてないようですからね。それにほら、私は案内役ですし!」


「ケビンさん……」


 さらっと言って先行するケビン。

 念のためにとでも思っているのだろうか、コタローもケビンと一緒に確認に行った。

 それにしても、「生死に慣れた行商人」とはなんなのか。死の商人か。『戦う行商人』であるらしいが。


 低木や茂みで見えないが、ユージとトリッパーたちの耳にゲギャッという悲鳴が聞こえてくる。

 息があったゴブリンにトドメをさしているらしい。

 生き物を殺して位階を上げるチャンスなのに、ユージたちは誰も近づかずにいた。

 戦いの中で殺すことはできるようになったが、トドメはまた違うらしい。チキンである。

 もっとも進んでやらないだけで、できそうな者も何人かいるようだが。


「今度こそクリアだろう。では行くか」


「お、おう。クールというかなんというか……」

「なあアイツほんとに現代日本人? こっち来てよけい怪しくなってない?」

「三河出身らしいからな。薩摩が有名だが、三河武士もなかなか……」


「ねえねえユージ兄、こんどはアリスがばーんってやる!」


「アリス、森では止めておこうな。ほら、みんなに任せて」


「えー?」


 ともあれ、道中に出てきたモンスターは倒した。

 ユージたちは、また進み出すのだった。

 血気盛んな幼女をなだめつつ。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「最近はゴブリン見かけなくなってきたのになー」


「そういえばそうか、よく気付いたなユージ。ケビンさん、どう思われますか?」


「やはりどこかに巣があるのでしょう。冒険者ギルドに依頼を出しましょうか」


「はい! ケビンさん、それってつまり……」


「全員は難しいかもしれませんが、一緒に行きましょう」


「おおおおおおお!」

「ぼぼぼ冒険者ギルド! 生冒険者ギルド!」

「落ち着けトニー! 生ってなんだ!?」

「俺のチカラがバレて期待の大型新人って言われちゃうわけか……」

「絡まれたりして! 絡まれたりしちゃったりして!」

「ミートも落ち着け! 依頼を出しに行く方だし大丈夫だろ?」


 四日目の午前中も大騒ぎである。

 だが、それもしょうがないだろう。

 ユージもトリッパーたちも、テンションが上がっているのだ。

 なにしろ木はまばらになってきたので。

 つまり。


「ケビンさん、そろそろでしたね?」


「ええ。間もなく見えてくると思いますよ、郡司さん」


「あのねえ、まちには人がいっぱいいるんだよ! あとおいしーものがたくさんあるの!」


「ふふ、教えてくれてありがとう、アリスちゃん」


 もうすぐ、プルミエの街に到着するのだ。

 交渉班のメンバー以外は、初めての異世界の街である。

 ハイテンションになるのも当然だろう。


「ああ、見えましたね」


 森が途切れて、ケビンが草原の先を指さす。

 ケビンの言葉に立ち止まり、静まり返るトリッパーたち。

 視線でケビンの指をたどり、遠くを見つめて。


「いよっしゃあああああ! きたきたきた、ついにきた!」

「アレが異世界の街!」

「おい待てお前ら!」

「ほっとけほっとけ。まだ距離はあるんだ、どこかで追いつくだろ」

「あそこに俺の夢が、獣人さんが……」

「よし、アングルはいい感じだな。おいおまえら、はやく歩けって。近づいていく画を後ろから撮るから」

「ファンタジー世界の街! 楽しみだなあ」

「ルイスくん、意外に落ち着いてるのね」

「サクラ、それはそうだよ。この距離じゃルイスが創るCGと変わらないから」

「待っててください異世界の幼女よ! いま助けますからね!」

「俺、コイツらと一緒に街に入るのすげえ不安になってきた……」


 カオスである。

 わいわいと騒がしくなっただけでなく、街が見えて興奮して走り出した者もいる。

 名無しのトニーとミートの二人だ。

 遠くに見えただけでまだ距離があるのだが。

 いくら二人が引きこもりではなかったとはいえ、数キロを走り抜く体力はないだろう。全力疾走だし。

 最初は、もうみんな、だいじょうぶかしら、と冷めた目で見ていたコタローだが、走る二人を追いかけてダッシュしていた。しょせん犬である。


「俺も前回はそんな感じだったなあ」


 微笑みながら、騒ぐトリッパーを見守るユージ。経験者の余裕である。街を見て固まったことは忘れ去られている。


 街が見えて、街と外を隔てる門に着くまでおよそ2時間。

 33人と一匹は、興奮しながらテンションも高く歩き通すのだった。

 途中で、やはり走りきれなかった二人を回収して。

 ちなみにコタローは物足りなそうだった。もうおわり? わたしもっとはしれるわよ? と言わんばかりに。




「堀と石の壁で守られた街! 鎧姿の兵士! 異世界、異世界だよ!」

「落ち着け名無し。城塞都市は世界中にあったし、鎧姿はコスプレでも」

「あああああ! 初めまして獣人さん! お名前はなんて言うんですか? ちょっと触ってもいいですか?」

「ヘールプ! 手の空いたヤツ集合! コイツ止めるぞ!」

「毛の流れ、質感、風になびく様子……なるほど、これが本物……」

「ねえジョージ、ルイスくん大丈夫? ブツブツ言ったまま動かないけど」

「こうなったら何も聞かないからね、しばらく放っておこう」


 カオスである。


 街が見えて、門の前に到着したユージとトリッパーたち。

 案の定、初めて街に来たトリッパーたちは大騒ぎを巻き起こしていた。


「落ち着いてください、みなさん! 街に入る手続きをしますよ!」


 ケビンがパンパンと手を叩いて騒ぎをおさめようとする。

 代表してクールなニートとユージを連れ、門の警備兵と話していたケビン。

 話がついて、トリッパーたちが待機していた場所に戻ってきたようだ。

 ユージとクールなニートの他に、一人の男を連れて。


「……こうして見ると多いものだな」


「ええ。ですから事前にお声をかけていたのです」


「賢明な判断だ」


 トリッパーたちを冷静に見渡した男。

 このプルミエの街の代官・レイモンである。


 街に着く前にケビンは先触れとして先行し、連絡を取っていたのである。

 もっともそれは事情を知った役人を呼ぶためで、まさか代官本人が来るとは思っていなかったようだが。


「では、手続きはあちらの詰め所で行おう。通行の邪魔になる」


「了解しました」


「みんな、こっちでやるってさ!」


 ユージ、のんきな声かけである。

 それでも、いちおう名目は開拓団長として登録されているのだ。

 声をかけただけでも成長だろう。


 31人がトリッパー、こちらで言う『稀人』だと知る代官がきたことで、手続きはスムーズだった。

 交渉班を除くトリッパーたちは順番に住人証明を受け取る。

 最後の一人、カメラおっさんが手続きを終えて。

 一行は連れ立って詰め所の外に出る。


 ケビンと並んで歩いていた代官が振り返る。

 ユージとアリス、30人のトリッパーたちを見つめ、わずかに口元を持ち上げて笑顔と思われるものを浮かべ、告げるのだった。


「ようこそ、プルミエの街へ」


 その言葉を聞いて、門の前の広場には、爆発したように歓声と拍手が響き渡る。


「おおおおおおお!」

「ここ、ここが……」

「おいバカいまは撮るなって! 泣いてないから!」

「ここにも獣人さん、あそこにも獣人さん……俺は、俺はついにユートピアにたどり着いたぞ!」

「思ったよりもキレイですねえ。旅人を狙う孤児がいなくて安心しました。安心しましたとも!」

「門番がリザードマンってぜったい似合うと思うんだけどなあ! ほんとわかってない!」

「雰囲気ある! うわなんだろ、すっげえワクワクする!」

「ここが最初の街……伝説のはじまりか!」

「いま掲示板が繋がったらなあ! めっちゃ自慢してやるのに!」

「煽ってやる、だろ?」



 春にトリッパーたちが来てから時は流れ、季節は初夏。

 異世界に行くことを望んだ者たちは、ついに全員、街に到着したのだった。

 中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の街へ。



遅くなりました……

なんとか今話中に街に到着!

次話、7/15(土)18時更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなたのしそーw [一言] なんだかこっちまでニマニマしてしまうw
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