大放出
今までなぜ思いつかなかったのか
興奮が冷めきらぬまま、もう一つの卵も合成した。
二つの卵をセットすると、水野さんとの雑談が始まった。
内容は大したことではないのだが、水野さんの雰囲気が
石川さんと似ているため、話していると落ち着くのだ。
適当に相槌をうちながら、ぼーっとしていると
俺の膝の上でカラーヒヨコちゃんが飛び跳ねていた。
「あれ? なんでお前ら赤いんだ?」
レッドチキン ♀ 飼育可能
レッドチキン ♂ 飼育可能
新たに生まれたヒヨコ達は、あおいのような綺麗な青ではなく
レイズの赤に近い体色をしていたのだ。
レッドチキンの♀をモミジ、♂を陽と名付け
あおいを世話役に任命した後、三羽と二人でじゃれあっていた。
そうこうしているうちに、朝ご飯ができたとの報告が来たので
俺と水野さんでそれぞれの部屋へ行き、皆を起こして組み立て式の大きめのテーブルを組み立てた。
お味噌汁とミラージュフィッシュの南蛮漬けが運ばれてきたのだが、これがまた美味しそうなのだ。
南蛮漬けは汁気が少なく、盛られているお皿には、葉物野菜が綺麗に添えられていた。
魚の身を解しながら、葉物と一緒に口に運ぶと
甘酸っぱい中に、僅かにピリリとした辛みが含まれている。
ミラージュフィッシュは十五センチ程なのだが、それでもしっかりと漬けこまれていることに感動した。
食事が終わり、奥さんにお礼を言った後に俺は家を出た。
お客さんを家に置いたまま留守にすることが、少しばかり気にかかる。
翠を走らせレストランへと急ぎ、裏口から古谷さんを呼んだ。
「古谷さん、これでお願いしますね。」
ミュータントメロンを手渡して、古谷さんが頷くのを確認した後に家に戻った。
「ただいま戻りました!」
今日で、今のこの家の賑やかさが
元の俺とペット達だけの静かな家に戻る。
寂しくもあるが、それと同時に心地よくもある。
皆さんが、俺の使用しているSNSに利用登録してあるというので
フォローしあって見送った。
見送りの際に、岡田のおばちゃんと明日香ちゃんもやってきた。
「また遊びに来ますね!」
と、両親の迎えの車に乗り込む際に明日香ちゃんが発した一言の中には
出会った当初にあった警戒心はすっかり消えていた。
それが嬉しく、俺も手を振り見送る。
「では、私たちも帰りますね。久しぶりの焼き芋だったので楽しかったです! また暇がありましたら何かしましょうね。」
「ええ、もちろん! 時間が取れそうならこちらが合わせますので!」
最後に帰ったのが伊崎さん一家だったので、ご飯のお礼にとスターメロンを押し付けた。
最近はスターメロンを大放出していたので、そろそろ違う果物を作ってみるのもいいかもしれない。
ともあれ目先の目標からクリアしていかなければ、やらなくてはいけないことで溢れかえってしまう。
まずはダンジョンでのレベル上げを進めていこう。




