素材
それから更に二十分後にパトカーが到着し、中から二人の警察官が降りてきた。
泥棒に入られたのは俺の家じゃないため、岡田のおばちゃんと明日香ちゃんがパトカーに乗り
下着以外の盗難があるのかを調べるために、岡田のおばちゃんの家へと走って行った。
さて、ここで目の前にいる泥棒さんなのだが
何やらおかしなことを口走っている。
「こ、これは俺の下着だ! 俺が着替えていたらこの化け物が俺を 俺を!」
何を言っているのだろうか?
完全に頭のおかしい人だった。
真実かどうかは不明だが、十中八九嘘であると誰もがわかるほどに動揺していた。
一先ず、警察で身柄を確保して取り調べを行うというので
後の報告は岡田のおばちゃんの家へと伝える形で収まった。
岡田のおばちゃんと明日香ちゃんには悪いが
まだ深夜なので、俺たちは再び床に就いた。
誰かの携帯電話のアラームが鳴り、その音で目が覚めた。
身体を起こすと、伊崎さんがアラームを止めていたので軽く挨拶を交わし
朝食を作るために、流しへと向かった。
「あ、おはようございます。」
伊崎さんの奥さんが、朝食を作ってくれようとしていたのだが
使ってもいい食材を聞いていなかったので待っていてくれたのだとか。
お米と野菜、それとミラージュフィッシュを用意すると
奥さんが調理するのをしばらく後ろで見ていた。
「おはようございます!」
観察していた俺に、背後から挨拶をしてくれたのは水野さんだった。
「おはようございます。 まだしばらくかかるのでのんびりしててください。」
と、俺を挟んで伊崎さんの奥さんが返事をした。
その言葉を聞き、水野さんが縁側で翠と遊び始めた。
水野さんの後ろを追いかけるあおいが可愛い。
朝からいいものを見れたので、俺もミュータントメロンを採取してポーチに入れておく。
「井出さん、この樹は何ですか?」
「ああ、それは合成樹ですね。最大で三つまでの物を合成すると、この取り出し口から出てくるのですよ。」
その場で、合成樹に生っているスターメロンを指でさし
「このスターメロンも合成樹で作った果物ですよ。」
と付け加え、スターメロンをもぎ取った。
「へぇー! 面白そう! 私も何か作ってみてもいいですか?」
特に断る理由もないので、許可を出した。
しかし、肝心の合成するための素材を持っていなかった。
そこで、試してみたい事を思いついたので
あおいを呼んで羽根を一枚貰った。
あおいの羽根と、あおいの卵を手渡して合成樹へと放り込んでもらった。
そして出てきたのは、薄桃色で半透明の卵だった。
「綺麗な卵ですね!」
適当な思い付きだったが、まさか本当にできるとは思ってもみなかった。
それは、あおいが孵化した卵と全く同じだったのだ。




