コンテナ
「あ…あの、清水明日香です」
「うちの孫だよ。古谷さんとこで一緒にご飯を食べようって呼んだのさ」
そういうことか。
話を進めていくと、予約を取っているのは明日の午後だという。
明日香ちゃんは大学生で、今は就職活動が終わって暇な時期ということで
少し早いが就職祝いも兼ねた食事会として予約を取ったのだが、ご両親が仕事の都合で来られなくなってしまった。
そのため、数日前からおばちゃんの家に泊まっていたそうだ。
今まで焼き芋など出来る環境にいなかったので、とても楽しみにしていたと語ってくれた。
三人でつまんでいたポテチも残りが少なくなり、世間話に終わりが近づいた頃
三井さん夫婦が到着し、その後に伊崎さん一家がやってきた。
一気に賑やかになった庭には、あおい達も歩き回っている。
伊崎さんにその後の体調の変化を聞いてみたが、相変わらず元気に過ごせていると答えてくれた。
「よし、そろそろかな」
棒で灰を掻き回し、中からゴロゴロとアルミホイルに包まれた物をいくつか取り出す。
そのタイミングで、院長がナースの水野さんを連れて遊びに来てくれた。
古谷さんと石川さんは仕事の方が忙しく、来れないことをとても悔しがっていた。
さて、ここで軍手を配り一つずつ銀色の玉を渡していく。
渡されたアルミホイルの玉を見て、不思議な顔をしている皆。
「普通に焼き芋するだけでは面白みに欠けるので、今回はちょっとした遊びとして包んだ食材をランダムに配ってみました」
突然はじめた悪戯まじりの遊びでも、受け入れてくれる人達だからできることだ。
ここに住み着いてから、本当にいい人達に恵まれたと思う。
せーのの合図で一斉に広げたが、パープルカウの肉に当たった人は一人もいなかった。
「おかしいな? 半分くらいは肉のはずなんだが・・・ 」
「何か言いました?」
やばっ、きかれてた。
「ああ・・・いえ、何でもありませんよ。 さ、食べましょう」
味付けは一切していないので、塩とバターと醤油だけを用意しておいた。
明日香ちゃんは玉ねぎに当たったようだが
玉ねぎはとろっとろになり、少し食べ辛そうだ。
「はい、これに広げて食べるといいよ」
と声をかけ、紙皿を手渡した。
そしてこの時に気付いたのだが、割り箸を出すのをすっかり忘れていた。
灰を囲むように並べられたコンテナに座っている面々に配り終えると、俺も空いている所へと腰を落とした。
火が消えてしまったとはいえ、やはり焚火はいいものだ。
今では自由に焚火をすることもできなくなってしまったが、昔はよく公園で枯れ葉を集めてやったものだ。
そんな話を岡田のおばちゃんと三井夫婦と院長の間で交わされていた。
俺もそれを経験してきた身として、頷きながら聞いていた。




