明日香
包丁と短剣でサクサク倒していけば、あっという間に大量のネズミ肉が手に入るのだ。
せっせとポーチにしまい、次の敵を探しに行く。
期待していた他の敵だが、ネズミ以外には全く見つからなかった。
攻略していくたびに一種族しか現れていない気がするのは気のせいなのだろうか?
三階層を簡単に抜けてもいいのだが、そうした場合に
最悪のパターンを予想すれば、ここはまだレベルを上げておかなければいけないことは容易に想像できる。
現在のレベルは70だが、未だ上限ではない。
であれば、今後の敵次第では俺は間違いなくやられてしまうだろう。
幸いにも、この三階層は敵の量が多いのでレベル上げにはもってこいだ。
ここで75まで上げてから、次の階層へ行くことを新たな目標として
一度家に戻る事にした。
「ただいま」
庭では、あおいと翠とルカが枯れ葉と落ちていた枝を運んでいた。
「うん、いい感じに集まってるな。 お疲れさま、ありがとうな」
もうすぐ皆が来る時間なので、あおい達の手を借りられたのは助かった。
村に生えている楓の葉も赤く染まりはじめたことで
井戸端会議をしていた時に、誰かがつぶやいた
「焼き芋の季節ですね」
の言葉に、皆が即座に反応したことで決まったこの焼き芋。
焼き芋とは言うが、実際にはいろいろ焼くつもりだ。
甘藷をはじめ、馬鈴薯から里芋
玉ねぎやニンニクもホイルに包んで、濡れた新聞紙を巻いてからアルミホイルで包んでいく。
実はまだ、パープルカウの肉の存在は誰にも喋っていないので
今日の最後の方でサプライズとして試食してもらう予定だ。
全て包み終わり、落ち葉が灰になるまでは冷蔵庫で保管する。
火が消えていく落ち葉の山を、木の棒でガサガサとほじくり返してすべて燃えるように掻き回していく。
灰になったのを確認したら、今度はスコップの出番だ。
中心部を掘り、そこにアルミホイルで包んだものを放り込み
周囲に積んだ灰を崩していけば、あとは待つだけだ。
火は消えているけど、火事には気を付けておかねばならない。
消防にもしっかりと連絡をして、消火器の準備も怠らない。
人が来るまでの間、することがないので縁側でポテチをつまんでいたのだが
このあたりで見たことがない顔の子が、こちらをそっと覗いていた。
大学生くらいだろうか?
目的があれば接触してくるだろうし、こちらからは動かない方がいいかもしれない。
「ほら明日香、止まってないで進みなさい」
明日香と呼ばれたその子は、声に反応して後ろを振り向く。
しばらくして、その視線の先から俺が目視できる範囲に現れたのは
岡田のおばちゃんだった。




