パープルカウの肉
さて、ルカのことなのだが
実は少しだけ見覚えがあるのだ。
牛という枠組みでは同じであるため、シルエットでの判断になってしまうが
メタルイーターとまるで同じだった。
色の違いこそあれど、角の本数や形
尻尾の長さや体の大きさ。
これらが合致してしまえば、同じ生き物として扱ってもいいのではないだろうか。
ただ、鑑定の結果でパープルカウと出ているので
別物ではあるのだが、どうしても可能性を捨てきれないでいた。
はっきりさせておきたいのにも当然理由はあるのだが…。
その理由とは、食べ物のことである。
メタルイーターはブルーメタルを食べていた。
恐らくは、名前の通りに金属を食べるのだろう。
だが、ルカは畳を齧ろうとしていた。
これをみれば、ルカが草食だということはわかるのだが
万が一にも金属を食すようであるならば、敷地内と言えど野放しにしておくのは危険すぎる。
車が齧られたら、この村での生活は殆ど壊滅的だと言ってもいい。
古谷さんと石川さんに頼ることもできるが、俺ほどに絡みがない三井家や岡田家は大変なことになる。
ルカは大切な家族になったわけだが、乳牛として機能していない今では
ただの大喰らいと判断されても言い返せない。
翠は俺のあしになり、あおいは卵を
プラムは俺の敷地の警護を、レイズは旅館とレストランの警護を
皆、しっかりと役目を持っているわけだが
ルカは草を食べるだけなのだ。
雑草を食べつくした後に、耕牛としての活動も考えてはいるが
重労働を押し付けるのはあまりに可哀想だ。
今は考えても仕方がないことなのに、この件は頭から離れてくれなかった。
「あー! もう! やめだやめ!!」
声を荒げ、思考を切り替える。
ルカは家族だ、それでいいじゃないか。
それで納得しよう。
自分に無理やり言い聞かせ、今後のことは流れに身を任せるしかないと
考えることを諦めた。
「そうだな、ルカが食べ終わった場所に牧草でも植えてやろう。」
金ならいくらでも余っている。
それを使わずに貯め込んでいくだけの毎日に
少しばかり申し訳なさを感じていたこともある。
もしかしたら、今後も卵を拾い孵化させて
その度に悩むことになろうとも、今の俺にはこれが最善案だ。
この日は、ルカが雨に濡れないように
簡易だが小屋を建ててから眠りについた。
そして翌日、ルカの様子を見に行くと
そこには目を疑うような事が起きていた。
ルカが寝ているその横に、巨大な肉塊が落ちていたのだ。
すぐに鑑定をかけると
パープルカウの肉:柔らかくて美味しいパープルカウの肉
随分と簡単な詳細文だが、最近の鑑定さんは手を抜いているのだろうか?
ともかく、美味しい肉ということは
これで安定して古谷さんに卸せる食材が増えたということになる。
だが、ルカに傷は見当たらない。
どうやって分離したのだろうか。




