激痛
空気とは全く違うものが体中に浸透するのがわかるのだが、全く苦しくはない。
顔を水から出してみたが、特に変わったこともないので無害ということだろう。
今度こそと、今度は息を止める必要もないので
先ほどよりもゆっくりと進むことができた。
階段を抜けると、神秘的な光景が広がっていた。
ここは海底だが、水上には太陽のようなものが確認できる。
陽射しが入り、群れで泳ぐ魚の大群がきらきらと反射していた。
だが、この魚を鑑定しても詳細が出てこなかった。
魚の群れに近寄ってみるが、逃げようとしないので手を伸ばしてみた。
「ん? 触れる…よな?」
掴んだ魚は、ピチピチと逃げようとしているが
しばらく掴んでいると動かなくなった。
ミラージュフィッシュ:個体数は少ないが大きな群れの幻覚を見せ敵を遠ざける
なるほど、この群れの大半は幻というわけだ。
だが、なぜ掴んでからでないと鑑定できなかったのかは未だにわからないままだ。
とりあえずポーチに魚を放り込もうとしたのだが
ポーチを開ける前に気付いた。
「水…入らないよな?」
日に日に容量が増えていくポーチも、いまではどれ程入るかわからない。
そんなポーチに水が大量に流れ込んだら・・・
考えるだけでも恐ろしい。
特殊な水であることは確かなのだが、流石にそんなに沢山はいらない。
今日はここで家に引き返すことにした。
翌日、俺は昼からホームセンターへ向かい
三角コーナーネットとツールバッグを購入し
インターネットで見つけておいた近場の釣具屋まで瞬間移動する。
釣具屋では、少し大きめの網を購入して家に帰った。
三角コーナーネットを横にずらっと並べ、紐を通していく。
少しばかり動き辛くはなるが、仕方がないことなのだ。
両端に輪を作り、ツールバッグと一緒にベルトを通した。
ツールバッグには酸と毒の試験管、さらに空の試験管を五本ずつしまって準備完了だ。
五階層の階段まで辿り着くと、最初に空の試験管に水を汲んだ。
それをツールバッグに戻し、ようやく探索開始だ。
昨日とあまり変わりがないので、とりあえず魚の群れを網で追い回し
捕獲した魚が動かなくなったのを確認してからネットに入れていく。
すべてを捕獲することはできなかったが、量は十分だ。
「あ! エビだ!!」
伊勢海老のようだが、かなり大きなエビが海底の岩陰に隠れていた。
俺が近づくと、エビはすぐに引っ込んでしまったので
俺も変な対抗心で、逃がすまいと手を突っ込んだ。
「いて!」
当然、突っ込んだ手に激痛が走った。
痛みはすぐに治まったのだが、この中で一体何が起こったのか知りたくなり
エビを諦める覚悟で岩をひっくり返した。
ひっくり返すと、海底の砂が巻き上げられて視界が悪くなった。




