呼吸
消える気配はないのだが、動く様子も無い。
サンドワームの肉:サンドワームの筋張った肉
「はぁ!?これドロップアイテムだったのかよ!」
光のエフェクトは砂が舞ったときに終わっていたのだろう。
とんだ無駄骨だったな。
周囲を確認しても、モンスターの気配がないため
ミミズの肉をブロック状に切り分けていく。
キィン
「ん?」
切り分けている途中で、短剣が肉ではない何かに当たった。
周りの肉を切り落とし、中にあったものを取り出す。
「やった!新しい卵だ!」
しかし、ドロップアイテムからも出てくるものなのか。
紫色の卵だが、今回は透明度が低く色が濃い。
レベル:※50 HP:500/500 技能:鑑定 幸運(微) 瞬間移動 鬼人化
うん、レベルも上がっている。
三週目の上限に来ているようなので、このまま五階層まで進んでいこう。
あっちへうろうろ、こっちへうろうろ
ひたすら階段を探しているのだが、砂に隠れているため
なかなか見つからない。
「ん?あれは何だ?」
遠くに、砂から少しだけ飛び出した岩が見えた。
そちらへ移動する際もモンスターからの襲撃は無く
歩き辛いこと以外の問題はなかった。
岩に近づき、周囲をぐるりと周ってみたが
階段らしいものは見当たらない。
苛立ちを紛らわせるために岩を蹴飛ばすと、岩が少し動いたので
岩の下に手を突っ込んで持ち上げると、その下に階段が隠れていた。
「はぁ、やっとみつけた。」
実は途中から、見つからないんじゃないかと半ば諦めていたのだが
なんとか見つかってよかった。
やる気も戻ってきたところで、早速階段を下り始めたのだが
ここで問題が発生した。
五階層に下りる階段の途中が、浸水していたのだ。
「ええー・・・・。」
とりあえず様子見に潜ってみることにしよう。
着衣水泳なんて何時以来だろうか。
少しずつ水に入っていくのだが、ここで妙なことに気付いた。
着衣水泳のはずなのに、服を重く感じることがない。
そしてなにより、この水は冷たくないのだ。
それに加え、俺の吐いた空気が泡になることはなかった。
ここで、俺の頭の中に一つの可能性が浮上する。
だが、それを確認するためには一度戻らないと危険なため
まだ階段の途中なので、戻る事に躊躇いはなかった。
「ぷはぁ!」
水から這い出て、深呼吸をすると
すぐに確かめるために水に顔を近づける。
そして、息を大きく吸ってバシャン! と顔を水に浸けた。
試したいのは、水中で普通に肺呼吸ができる可能性だ。
試そうとするのだが、これがまた怖い。
しかし、俺がいくら息を止めていたところで限界はあるので
意を決して口に溜まった空気を吐き出し、水を吸い込んだ。




