尻尾
通路の先へと足を進めるが、この通路はあまり長くはない。
視線の先に部屋が見えているので、前後を警戒しながら近づいていく。
そして、先の部屋へ近づくにつれて
ゴリッゴリッと、鉱石が砕かれるような削り取られるような
そんな音が聞こえてきたのだ。
足音を立てないようにゆっくりと近づき、通路の出口から少しだけ顔を出す。
牛がいる。
ブルーメタルを齧ってる牛がいる。
メタルイーター:鉄分を多く含んだ鉱石を好んで食べる大型の牛
巨大な牛は、体高だけでも俺が見上げるほどだ。
そんな牛に近づきすぎたのか、牛はこちらを見て警戒している。
しかし、警戒をしているのに襲ってはこない。
俺はポーチからブルーメタルを取り出し、牛の足元に転がしてみた。
ブルーメタルに顔を近づけ、しばらくしてから牛がそれを食べ始めた。
そして、ブルーメタルを食べている牛の足元が光だし牛の姿がゆっくりと消えていく。
消える牛と入れ替わりで、地面には階段が現れた。
どうやらあの牛は、ギミックの一種だったようだ。
三階層があまりにもあっさり終わってしまったので、何かあるんじゃないかと勘ぐってしまう。
だが、それも杞憂に終わり
四階層へは何事もなく到着することができた。
今回の四階層は砂の海、砂漠だった。
暑くもなく、寒くもない。
歩き辛いことが今後の戦闘に影響してくることを考えると、ゾッとする。
不用意に動き回らず、目を凝らして辺りを見回すと
砂の中からこちらの様子を見ている生き物が何匹か確認できた。
あまり大きくはないことも予想できるため、少しだけ安心した。
俺が歩き出すと、周りに砂が舞う。
砂の中からでてきたのは、六十センチほどのトカゲの群れだった。
ポイズンリザード:毒を持つ肉食のトカゲ
「なるほど」
毒だけなら大した脅威にはならないが、物理的なダメージが同時に来る。
そのダメージがどれ程のものかわからないうちは、油断せずに戦うほうがいいだろう。
襲ってくるトカゲの動きはあまり速くないため、避けることも難しくない。
避けては倒し、避けては倒しをくりかえし
プチプチとトカゲを屠っていったが、トカゲの増援が鬱陶しい。
「あー!もう!増える!!」
最初は数匹程度だったのに、いまや百は軽く上回っている。
そのトカゲ達が一斉に動きを止め、尻尾を空に向かって伸ばしたのだ。
「な・・・なんだ?」
俺が声を発すると同時に、トカゲ達は尻尾を振り
尻尾の先端から緑色の液体をこちらに飛ばしてきた。
「ちょ!わぷっ・・・苦い!!」
腕輪のおかげで毒にはかからないが、前後左右から飛来する毒液を避けることはできなかった。
てっきり噛みついて毒を流すものだと思っていたので完全に油断した結果がこれだ。




