事件
テーマパークのダンジョンからモンスターが溢れ出し、施設内の来場者を襲い始めたという内容だった。
理由は単純で、ダンジョンへと踏み入った者の生還率が極端に低いため
暫くの間、誰もダンジョンへと踏み入らなかったのだ。
その期間があまりにも長かったため、蟻の巣を突いた様な大事件となってしまったのだという。
ダンジョン外での死者も多く、その数は既に三桁へと達しているのだとか。
これではもう、テーマパークとしての運営は無理だろう。
このテーマパークの経営陣、つまり地主の一族は
すでに逃亡しており、責任を逃れるための行動だと批難が強まっている。
「あーあ、逃げに回ったか・・・。」
この事件がきっかけで、発見されたいくつかのダンジョンには
有志で多くの冒険者が集まっていた。
攻略しなければモンスターが溢れ出す、それは十分予想はできていたことだ。
実際に、何度もダンジョン外へとモンスターが出てきた事例が挙げられている。
だが、俺が一番問題視しなければいけない問題は他にある。
その問題とは、以前に発案されたダンジョンが発見された土地の差し押さえの問題だ。
まだ正式に決まったわけではないが、それも時間の問題だろう。
ダンジョンは貴重な資源を産出するが、そのリスクがあまりに大きいため
今まで見逃されてきたことが大きい。
だが、今回の事件の発生から
ダンジョンがある敷地の近隣から、住民たちの不安の声があがった。
その不安を煽り、ダンジョンを公共の施設にしようという
そんな政治家が一部で動き始めたという噂もある。
俺の日記のコメントにも、心配する声がいくつも寄せられていたので
そのコメントに対し、俺も丁寧に返していく。
一通り返し終わり、早速ダンジョンヘと踏み込んだのだが
三階層へ向かう途中に通った二階層が、また草原になっていたのだ。
モンスターは現れなかったのだが、またオーガと戦うのかとヒヤヒヤしながらも
三階層へ向かい階段を下っていく。
相変わらずブルーメタルがそこら中に飛び出ていた。
だが、モンスターも見当たらない。
モンスターがいないのにいつまでもこの階にいるのはあまり良くない。
とりあえず階段を探すことにしたのだが、階段も見つからなかった。
壁に手を当てながら調べていると、壁面に僅かに罅の入った部分が見つかった。
まさかと思い、つるはしで殴りつけると
壁面はガラガラと崩れ落ち、その先には通路が姿を現した。
この結果には満足したが、これは少しばかり意地が悪い。
うすぼんやりとした明かりがある程度で、僅かに入った罅を見つけるのは
少しばかり難しいのだ。




