承知
黒い玉と、白い玉
この二つがオーガの落としたアイテムだ。
正確に言うなら、オーガとの戦闘で使用した短剣もあるのだが
あれは奪い取った物なのでカウントしない。
鬼人の秘薬:使用すると技能(鬼人化)を得ることができる。
鋼の秘薬:使用すると身体の硬度を上昇させる
「これはまた・・・。」
石川さんに鑑定の結果を伝え、すぐに両方使用した。
レベル:48 HP:480/480
技能:鑑定 幸運(微) 瞬間移動 鬼人化
うん、しっかり増えているな。
そこから更に、鬼人化に鑑定をかけると
鬼人化:鬼のような角が生え、HPを消費して身体能力の五倍の力を得ることができる。
んー、またHP消費かー・・・。
だが、今回のような戦いでは確実に使用することになるだろう。
レベルで強化された身体能力の更に五倍も強化されるのだからHPの消費も頷ける。
「と、まあこんな感じですね。」
さらっと石川さんに説明すると、石川さんもふむふむと頷いた。
そして、ここで石川さんがとんでもないことを言い放った。
「私もダンジョン探索してみたいです!」
「ダメです!」
俺は間髪いれずに答えた。
当然だ、ダンジョンは危険な場所で、昨日の戦いですら命がけだったのに
親切にしてくれている人を連れて行けるわけが無い。
若干の心苦しさは残るが、それでもやはり危険に巻き込むわけにはいかないのだ。
むー!と口を尖らせているが、ダメなものはダメだ。
「石川さん、俺は一晩寝ればある程度の傷は回復します。ただ、それは俺が積み重ねた経験値で得たレベルのおかげなんですよ。」
まだ一年もたっていないが、中々に濃い日常をおくれたのもこのおかげだ。
「先ほどのアイテムもそうです。あれは昨日、オーガとの戦いでギリギリで勝ち取った物なのですよ。ダンジョンは甘くないです、特にここのダンジョンは・・・。」
うちのダンジョンはすでに三週目だ、他のダンジョンは未だに一階層すら攻略されていないという。
それでも死者は毎日でている。
石川さんもそれは知らないわけではないだろう。
だが、あえて伝えておくべきだと思う。
「もう一度いいます、ダンジョンは甘くないです。どうしても潜りたいというのであれば、死ぬ覚悟が出来てからもう一度きてください。」
実際、俺にはそんな覚悟は微塵も無い。
それでも、これだけは言っておかなければならなかったのだ。
他ならぬ石川さんのために。
急に声を低くした俺に驚いたのか、石川さんは若干涙目になっていた。
なんか申し変えない気分になってくるが、ここは堪えておかないと。
「ごめんなさい・・・。ちょっと悪ノリしちゃったかもしれません・・・。」
冗談交じりで放った言葉だということは、俺も重々承知している。
「わかってくれればいいんですよ。ただ、これだけは絶対に覚えて置いてくださいね。」




