巨人
「眩しい・・・。」
九人の患者達が一斉に光に包まれているので、とても眩しいのだ。
光が収まった後も、目がチカチカするのだが
患者達は伊崎さんと同じように、身体が変化していった。
その変化に、またも戸惑っている患者の中から
一人の車椅子に座っていた患者が、車椅子から降りてそのまま歩き出した。
それを見た患者達が、その場で手をグーパーしたり軽く跳ねはじめた。
一通り確認が済んだようで、俺のほうに向き直り
患者達が感謝の言葉をかけてくれた。
元患者達の親族は、すでに控えの部屋で待機しているので
俺達はそこへ向かうことにした。
部屋の前まで来ると、元患者達に入るよう促したのだが
早く会って安心させたいが、どんな顔で会えばいいのかわからないと言われたので
俺と院長が先に入り、その次に伊崎さんを筆頭に入室するかたちとなった。
親族には、後日改めて精密検査はするが、恐らく問題は無いだろうということを伝え
各家族に一つずつスターメロンを押し付けて、俺は院長に何かあればまた来ますと言って家に戻った。
さて、とりあえず一通りの事が片付いた。
二階層ではまだヘビしか見つかっていない
レベル上げも兼ねて二階層の探索をしよう。
二度目に踏み込んだ二階層は、以前とは全く異なっていた。
空が見えるようになり、俺の腰くらいの草が生い茂っている。
小高い丘が一つある以外は全て草で覆われているのだが
丘の上には薄緑色の巨人がこちらを睨みつけていた。
「まじかよ・・・。」
その姿からは、キリングスネーク以上の威圧感が溢れている。
間違いなく強敵だ。
すぐにツルハシを構えると、巨人も地面に差し込まれた剣を引き抜いた。
地面を割り姿を現したその剣は、巨人の背丈の倍ほどもある。
「おいおいおい・・・こいつに勝てってむちゃくちゃだろう。」
リーチの差もあるが、打ち合いが出来ないことも考えないといけない。
俺が全力で振ったところで、ツルハシが弾き飛ばされてしまうだろう。
オーガ:その力は絶大で、力だけならば下位の龍種に並ぶが頭が悪い。
「オーガって・・・」
面と向かっての打ち合いが出来ないのならば、受け流していくしかない。
駆け出した俺と同じように、オーガも走って俺のほうに向かってくる。
近付くにつれ、オーガの身体がよく見えるようになってくるが
やはりでかい。
高さで例えるなら建物の二階程、つまり五メートルくらいの背丈だろう。
ということは、その剣が十メートル前後ということになる。
つまりオーガのリーチは半径十メートル・・・・。
ただ薙ぎ払われただけで、俺は奴に届くことも無く弾き飛ばされてしまうだろう。




