瞬間移動
「うわー・・・こんな物いつ入手したんだ?」
害になる事はなさそうなので、迷うことなく使用する。
すると、宝珠はサラサラと砂になり俺の口に侵入してきた。
慌てて口を閉じてしまったのがいけなかった。
口に入れないとわかると、意思を持ったように動く宝珠は
俺の鼻から侵入してきたのだ。
だが痛みは全く無かったので、数秒だけ我慢していると喉の奥からグレープの香りが漂ってくる。
「ふー、びっくりした。」
レベル:43 HP:420/420 技能:鑑定 幸運(微) 瞬間移動
お、増えてるな。
瞬間移動、転移に近いものだろうか?
何にしても使ってみないことにはわからないか。
障害物の無い場所なら任意の場所に移動できるんだったよな。
試験管以外のアイテムを倉庫に放り入れると
カウントダウンの確認をしにパソコンの前に戻る。
あれからまだ三十分しか経っていないのか。
残り一時間半のカウントから、少し上に視線をずらすと
飛び跳ねて疲れたのか、足場の横の地面に座り込んでいた。
「障害物・・・。」
無い・・・な、試してみるか!
モニターに映る景色を目に焼きつけ、鑑定を使うときの感覚で瞬間移動を意識する。
すると、急に横から風が吹いてきた。
潮風だ。
目の前には座り込んでいる石川さんが見える。
古谷さんは俺が急に現れたことに驚いて固まっている。
ソロリと石川さんに近付き、耳元まで顔を近付け
「ヌヴァ~」
と、意味も無い言葉を声を低くして呟いた。
「ひゃひ!?」
石川さんは突然耳元で呟かれた気味の悪い声に反応して肩が跳ね上がり
わぁー!っと叫びながら古谷さんにしがみついた。
しがみ付かれた衝撃で、古谷さんが戻った。
「古谷さん、石川さん!こんにちは!」
悪戯したことを悪びれもせず元気よく挨拶しておいた。
「なんだー!井出さんだったのかー!」
と、ホッとしている石川さんと何かを考え込んでいる古谷さん。
そうだ、一応確かめておかないとな。
レベル:43 HP:410/420 技能:鑑定 幸運(微) 瞬間移動
ふむ、瞬間移動で使用するHPは10が目安か。
HPの消費量を確認する事は重要だ。
戦闘から離脱する際に必要となる能力なのだから。
「い・・・井出さん!い、いま!どこから!?」
古谷さんが混乱している。
「ちょっと特殊な技能が増えまして、実験がてらこちらに来てみたんですよ。」
まだ混乱しているようだが、ダンジョン関係のことならばと
少ししてから何かに納得したように、いつもの古谷さんに戻った。
「ちょっとやってみますね、今から古谷さんの後ろに移動します。」
ほんの一瞬視点がぶれるが、酔ったりすることはなさそうだ。
トントンと古谷さんの肩を軽く叩き、移動が完了した事を伝えた。




