面会時間
「末期とは穏やかじゃないな。末期の患者はいなかったと思うがの。」
「そうですか・・・」
他人の不幸を喜ぶようで気分は最悪だが、末期の患者がいないというのは幸いだ。
「それがどうかしたのかの?」
っと、こちらの質問に答えてもらったのだ
いい加減に話を切り出さないといけない。
「ええ、だいぶ遠回しにお話していましたね。話ベタなもので・・・」
「はははっ!構わんよ、それで?その試験管と癌・・・いや、病気全般だったな。」
「はい、まず俺の技能から説明しなければなりませんね。」
そう言うと、鑑定技能のことを院長に話す。
「なるほど。それで、これが何かの薬だというわけじゃな?」
「そうです。これは万能薬、鑑定の説明文では全ての病気を完治させる事ができると・・・。」
「なんじゃと!!!」
「うわぁ!?」
テーブルに思い切り手を叩き付け、突然立ち上がる院長の迫力に驚いてしまった。
「ああ、すまんすまん。興奮してしまった。」
「ああ、いえ。気になさらないでください。」
「なるほどのう・・・。それで癌か、事情はわかった!」
「では!」
「だが、まだダメだ。」
確かに理由としては間違っていないのだが、納得できるわけではない。
見ず知らずの男が持ってきた怪しい薬を、成分鑑定もせずに患者に使用したいというのだから
こんなに怪しいことはないだろう。
「わしの独断では決めることは出来ないが、患者の親族から許可が取れるのであれば許可しよう。」
「いいのですか?自分で言うのも何ですが、かなり怪しい話だと思いますが。」
「ああ、その際の責任はわしがとろう。」
非常にありがたい申し出だ。
だが、あまりにも院長のデメリットが大きすぎる。
なので、元々俺が周って使用する予定だった十本の万能薬とは別に
五本を譲り渡すことにした。
「今は怪しい試験管ですが、明日になれば貴重な五本の薬になります。大切に保管してくださいね。」
院長は一度ソファーに座り、試験管をしまった後
さて、と再び立ち上がり
「井出さん、引き受けていただけそうな患者の所へ向かいますよ。」
面会時間もあまりないですからね、と付け足した。
はい、と返事をして俺もすぐに席を立つ。
「効果があったとしても検査をしなくてはいけない。その検査も検査結果も明日になるが大丈夫かの?」
「あ、いや。明日はちょっと予定があるので、明後日にまた来ますよ。」
そう、明日は楽しみにしている虹水晶の公開生中継の日だ。
俺は、虹水晶から虹が飛び出るのを見て驚く人の顔が見たいのだ!!
そうかそうかと、院長は頷いた。
「おお、ここだ。伊崎さん、起きてらっしゃいますかのお?」




