グランドブレイカー
幾度も繰り返された包丁と応戦し、ついにヘビの尻尾の先が切り離されたのだ。
動きが荒くなり、こちらを見据える眼にも怒りの色が見える。
すぐにバック走で、ヘビを警戒しながら後ろへ退く。
そんな俺に反応して、ヘビはすぐに飛びついてきた。
大きく口を開けながら。
「かかったな!」
ポーチから取り出したイモムシの酸を、試験管の蓋を開け前方に振り撒く。
ヘビの頭に酸がかかると、グズグズと崩れ落ちていく。
頭が酸で溶けてしまっても、尚も動き続けるヘビはさすがだ。
最初から飛び掛ってきてくれたのなら、もっと簡単に倒すことが出来たのだが
最初の段階で投げつけても、俺が振り撒く前に突き飛ばされていただろう。
だが、この戦いでわかったこともある。
イモムシの酸の有用性だ。
これがどこまで続くのかはわからないが、今後の強敵に
出会い頭にぶちまけるのも手かもしれない。
ようやく倒せた強敵に、包丁で止めを刺した。
「げ・・・まじかよ!!!」
ヘビの王、結構な大物だったので期待したのだが
アイテムは何も落とさなかった。
吹き飛ばされたままのツルハシを拾いに、巣穴の奥まで戻ると
宝箱が二つ置いてあった。
しかし、ツルハシは見当たらない。
今まで一緒に戦ってきただけに、悲しい気分になる。
手から弾かれたあの時、退かずに攻めていたらと考えると後悔が残ってしまう。
だがあの時、攻めていたら俺は生残れたのだろうか・・・。
たらればの話は今更だ、それなら生き残った事で正しい選択をした証明にしよう。
そう頭では決めていても、宝箱に近付く度に視線の端で捜してしまう。
大丈夫だ、まだ包丁がある。
袖で眼を擦り、宝箱に手をかける。
「気晴らしになる物でもあるといいが・・・」
キィっと軽い音を鳴らして開いた箱の中にはイヤリングがあった。
飛翔のイヤリング:空を飛ぶことのできる耳飾 (60/60)
おお!中々面白そうなものが出てきた!
だが、括弧の中の数字は何だろうか?
ピアスなど着けたこともないので、ここで着けることは出来ない。
外にでたら鏡に向かって悪戦苦闘することになるのだろうか。
気を取り直して、少し大きめの宝箱に移る。
ギシリと重い蓋を開き、中を覗いてみるとツルハシが入っていた。
「は?え・・・どうなってんの?」
グランドブレイカー:迷宮の力を吸収し、変化したツルハシ
結局ツルハシなのかよ!!まったく、心配かけやがって。
まあいいや。
「おかえり。」
銀色の見た目は、メタリックブルーになっていたが手に馴染む感覚が教えてくれる。
間違いなく俺の落としたツルハシだ。
「さて、戻りますかね!」
本来の目的は随分前に達したので、心置きなく家に帰れる。




