ヘビの王
地鳴りのように聞こえるのはウサギの足音・・・・
だと思っていた。
だが、ツルハシから伝わる衝撃はもっと重量のある何かだったのだ。
「なるほど、やっぱり変化はあったということか。」
タンクスネーク:自重を利用して強烈な突進をする
どうりで重いわけだ。
恐らくレベルが1のままなら軽々と吹き飛ばされていただろう。
「気にしても仕方が無いか、今はレベルもしっかり上げているわけだし。」
最後の突撃も終ったので、アイテムを仕舞い穴に近付く。
ぺたぺたと触り、調べていると穴が広がり通路ができた。
構造的には同じものなのだろう。
このパターンは二度目だが、恐らくこの奥には宝箱があるだろう。
「だったら行くしかないよな!」
タンクスネークの衝撃でいまだ痺れている手を振りながら、ゆっくりと歩き出す。
しばらく歩いていると、先が明るくなってきた。
「なんだ?」
一階層とは違い、壁から飛び出た鉱石が発光しているようだ。
封光石:光を封じ込める石
「まんまだなー。」
だが、そんな感想を言ってられる余裕は既に無い。
ヘビの巣の奥にあった、いや
居たものは、巨大なヘビだった。
キリングスネーク:暴虐の限りを尽くすヘビの王
鳥肌が立ち、冷や汗が流れる。
ヘビの巣穴ということだけでも、十分予測できた事態だ。
先程までなら逃げることもできたが、もう無理だ。
目があってしまったのだから・・・。
だったらもう考える必要もない。
戦わないといけない、戦わなきゃ食われてお終いだ。
「ぜってー生き残ってやる!!」
こちらの声に反応して、ヘビもグオオオと吠え立てる。
腰を落としツルハシを構えようとしたのだが、構える前にヘビの尾が俺の足を払った。
「くっ!」
後ろに転がり、少しだけ距離を稼ぐがツルハシは手の届かない所へ行ってしまった。
「くそっ!」
すぐに包丁を引き抜き、ヘビを睨みつける。
どうやって倒したものかと、作戦を組み立てたいのだが
手札は限られている上に、相手の攻撃が思考を中断させる。
辛うじて見えるヘビの尾を包丁で弾きながら、少しずつ情報を集める。
後ろに退くことは出来るが、すぐに追いつかれてしまうだろう。
左右は壁で逃げ場も無い。
戦うしかないのなら、どうやって勝つかを考えよう。
力も体力も、恐らくヘビの方が上だろう。
奴は尻尾だけで戦っている。
この通路で十全に動けないことが原因だ。
ならば、俺が攻められるのはこの一点だけだという事だ。
懐に飛び込む機会を窺っていたのだが、一向に隙を見せてはくれない。
どれくらい時間が経っただろうか。
汗だくになりながらも、ようやく好機が訪れた。




