レイズ
「なるほどねー、孵化はランダムだったのか!」
スターアイも粘土も、そこそこ集まったので家に戻ると孵化器に卵を入れる。
「楽しみだなー。」
寝転がりながら孵化を待っていたのだが、疲れていたのか眠ってしまった。
「ん・・・ねちまったか・・・」
外は薄明るく、朝が来た事を教えてくれた。
「ん?あおい?」
いつも俺が寝るとどこであれ、頭の近くで丸まっていたあおいが
今はどこにも見当たらない。
「あおいー?」
呼びかけると、庭の方からキュイー!と返事が返ってきた。
「なんだ、庭にいたのか。」
そのあともずっとキュイキュイと鳴くので、俺も庭に出てみると
子犬がいた、全身が真っ赤な子犬だ。
「まさか・・・」
ブレイズフルフ:敵と認定したものを焼き、喰らい尽くす猟犬。
「そうきたか。」
そうなるとだ、名前を付けてやらないとな。
「よし、お前の名前はレイズだ!覚えたか?」
レイズを抱き上げ、顔をこちらに向けて問いかけると
キャンッ!と元気よく返事が返ってくる。
それにしてもダンジョン産の卵から孵化した動物は、どうして半透明なのだろうか?
「よし、翠いくぞー!」
古谷さんのお店と石川さんの旅館に向かおうとすると、レイズも一緒についてきた。
「ん?お前も来るか?」
キャンッ!っと元気な返事を貰ったので
「よーし!ちゃんとついてこいよー!」
と声をかけて翠を走らせる。
だが・・・・
「レイズ早いな!」
翠が今までで一番速く走っているのに、レイズはそのスピードを楽々と追い越す。
それも、時々立ち止まりこちらを確認しているほどだ。
「うん、明日くらいになれば任せられそうだな。」
それから数分後にお店に着くと、いつものように古谷さんを呼び出す。
従業員の方々も慣れたもので、俺の姿を見るとすぐに店の奥に駆けて行く。
「レイズ、おいで!」
俺に呼ばれると、ピョンっと飛び上がるレイズをキャッチして胸に抱え撫で回した。
暫く撫でていると、古谷さんが出てきたので挨拶をした。
「どうぞ、これが種です!どこに植えますか?」
問いかけると、すぐに教えてくれた。
「今朝作ったんですよ、楽しみで楽しみで・・・」
向けられた手の方を見ると、花壇の形が変わっていた。
「これはまた・・・」
古谷さんは今朝からと言っていたが、恐らく昨夜から作業していたと予想できる。
「では、中心に植えていいですか?」
「ええ、もともとその予定でした。」
ですよね、真ん中を円状にブロックで区切ってあれば嫌でもわかる。
当然、その周りはミュータントベリーのための場所だろう。
種を植え、埋め込まれた飛び石を渡って古谷さんのいる所へ戻る。
「これでよしっと!」
その後、古谷さんから犯人の処遇を教えてもらった。




