原因
古谷さんに、大丈夫だよ。
なんてすぐに言えたらいいのだが、まだ成功するかどうかもわからない。
ならば、ここは黙っておいて成功した後で喜ばせよう。
「古谷さん、ミュータントベリーを収穫した物ってありますか?」
「ええ、今朝方に収穫した分がまだあります。」
ふむ、なら大丈夫だろう。
「三つほど譲っていただけませんか?」
古谷さんは、快く譲ってくれた。
その後、古谷さんに色々作ってもらいお腹がいっぱいになるまで食べた。
「さて、はじめるか。」
家に着くと、すぐに譲ってもらったミュータントベリーを三つ取り出す。
「恐らく苗は無理だろう、だが種なら可能なはずだ。」
合成樹の前に立ち、各投入口に一粒ずつ放り入れる。
取り出し口から転げ落ちた物に鑑定をかけると
ミュータントベリーの種:通常のベリー種よりも繁殖力が強く、様々な効果のある果実が実る。
「よし、これならあの花壇も問題なく再生できるだろう。」
無事に解決できたが
目の前の樹に、空色に点滅する星型の果実が実っていたのだ。
一つや二つではなく、大量に実っている。
この果実に見覚えはないが、予想はつく。
だが、なぜ合成樹に実っているのかがわからない。
スターメロン:星型の果実で甘味が強い。
うん、やっぱりだ。
間違いはないみたいだが、植えた場所が近かったのが原因なのだろうか?
鑑定しても出てこないならば仕方が無い、ここはひとまず古谷さんを安心させよう。
「翠、何度もごめんな。もう一回頼むわ!」
翠は喜んで俺をのせて走ってくれた。
「さあいくぞ!」
通い慣れた道を進み、お店が見えるとそこには古谷さんがいた。
「何してるんだろう?」
花壇に向かって座り込んでいるが、特に何かをしているようには見えない。
「古谷さん、どうかしたんですか?」
背後から声をかけると、ビクッ!と肩が跳ねる。
「ああ、井出さんですか。どうしても諦め切れなかったんですよ。」
やっぱりか、堪えてはいたようだが隠しきれていなかったもんな。
「実は古谷さんにプレゼントを持ってきたんですよ。」
今の古谷さんにとってはとっておきのね。
「プレゼント・・・ですか?でも・・・」
古谷さんは俺から視線を逸らし、花壇を見る。
ああ、そうか。
古谷さんはミュータントベリーが戻らないこともそうだが
何よりも譲り受けた物を守れなかったことが悔しかったのだろう。
「気にしないでくださいよ、あれは実験も兼ねてと言ったでしょう?」
こちらは場所を提供してもらった身だ、感謝こそしても恨んだりはしない。
ましてやミュータントベリーを燃やした原因は俺にある。
だから
「どうぞ、ミュータントベリーの種です。」
しっかり責任を取り、譲り渡すんだ。




