頼みごと
翌朝、俺は古谷さんのレストランに来ていた。
「古谷さーん、品物もって来ましたー。」
ミュータントベリーを食べて待っていると、さほど時間は経たずに裏口が開いた。
「あ、これが品物です。」
卸す品を詰め込んだ箱をドサリと置き、どうぞと伝える。
そして
「今日は卸す物ではないんですが、見てもらいたいものがあるのですよ。」
「見てもらいたい物・・・ですか?」
ええ、と告げてポーチから虹色の宝石を出す。
「まだ鑑定していないのですが、この宝石に見覚えってありますか?」
丁度いいから鑑定してみるか。
そう思い、古谷さんに手渡した宝石を鑑定する。
レインボークリスタル:虹を閉じ込めた水晶
「え・・・」
「ん?どうかしましたか?」
「あ、いえ。鑑定してみたのですが、レインボークリスタルと言うそうです。」
「ほほう、虹水晶ですか」
「ええ、虹を閉じ込めた水晶らしいです。」
そこで俺は気がついた。
恐らくこれが失敗すれば俺はただの大馬鹿者だろう。
だが、あと十九個もあるのだ
一個くらい犠牲にしてもいいだろう。
「古谷さん、俺いまから勿体無いことするけど馬鹿だと思わないで欲しいんだ。」
古谷さんは困惑しながら、それでも了承はしてくれた。
それでは、と続け
「ぺいっ!」
っと砂利道に叩きつけた。
「ちょ、ちょっと。なにやってるんですか!」
「いやね、ちょっと虹を開放してみたかったんです。あ、ほら!」
割れた水晶から虹色の光が漏れ出し、そこから半円状に虹が飛び出した。
「きれいですねー・・・」
「ですね。ただ、ちょっと勿体無いです。」
「うん、似ているものとすればオパールでしょうが・・・これは違うものですね。」
「ですかね、感づいてはいたのですが・・やっぱりダンジョンでのみ取れるもののようです。」
これなら高く売れそうだが、俺には商売に関する知恵もなければ技術もない。
だが簡単だ、困ったときには手伝ってくれる人材がいるではないか。
正直、頼りっぱなしは嫌なのだが・・・
だが他に宝石関係で頼れそうな人がいない以上、彼に聞いてみるほかないだろう。
「古谷さん、あの宝石を売ることって出来ますか?」
「ふむ、販売ですか・・・。」
顎に指をかけて考えているようだが、しばらくするとにっこりと微笑み
「はい、大丈夫だと思います。よろしければ一つサンプルでお借りしてもいいですか?」
ダメもとで頼んでみたが、予想より良い返事がもらえた。
「はい、一つでいいんですか?全部預けちゃってもいいですけど・・・」
すると、古谷さんはハハハと笑い
「信用していただけるのは嬉しいです。でも一つで大丈夫ですよ、彼女も近々この町へ着ますから。」




