プラム
「む、何も落とさないか」
少し期待していたのだが、ナメクジは何も落とさなかった。
「ということは、苗はミュータントウィップからだな。」
翼竜が落とされた場所の近くまで来たのだが
いまだミュータントウィップは襲ってきていない。
「どこにいるのかなー」
すると、少し開けた所に蔓に絡め取られた翼竜が転がっていた。
注意しながら駆け寄ると、翼竜が暴れているのがわかる。
「ふむ、まだ生きているのか。」
包丁を引き抜き、蔓に切りつける。
蔓は包丁に切られ、何事もなく消えていったのだが
翼竜はまだ生きていた。
階段は目視できる位置にあるが、距離はかなりある。
困惑する翼竜と焦る俺
「詰んだ・・・かな」
だが、そんなに焦る必要もなかったようだ。
戦闘になることも考えていたのだが、翼竜は俺に頭をこすり付けてきた。
この感じは覚えがある。
あおいと翠が毎日同じようにしてきたからだ。
翼竜: ♀ 飼育可能
「うわーお、まさかの展開」
とりあえず探索を打ち切り、家へと帰る。
あおいと翠に仲良くするように言わないとな。
「あおい・翠、おいで」
呼ぶとすぐに縁側のそばによって来る。
可愛いやつらめ。
「コイツなんだけど新しく家族になるからな、仲良くしろよ?」
そう伝えたのだが、あおいと翠は首をかしげている。
「ん?ああ、そうか!お前の名前はプラムだ!」
翼竜にプラムと名付けると、あおいと翠はプラムに近寄って身体を擦り付ける。
プラムの身体は大きく、羽根を畳んだとはいえ
階段を抜けられたのが不思議なほどだ。
このサイズなら乗れるかもしれないな。
三匹を庭で戯れさせて、俺はポーチから苗を取り出した。
言うまでもなく、プラムを助けた際にミュータントウィップが落としていった物だ。
だが、この苗の見た目が以前と違う。
「別種・・・だよなあ・・・」
ミュータントメロンの苗:香りが強くとても甘い果実が出来る。
「うわぁ・・・まじかよ」
メロンって俺の大好物じゃねーか。
「やっべ、テンション上がってきた。」
そそくさと庭のプランターに植えると、支柱を立てた。
「あおい、翠、プラム。これは絶対に食べちゃダメだからな!いいな?絶対だからな!」
起床すれば、予想通りに立派な・・・
「え?メロン・・・だよな?」
メロンのようなものが出来ていた。
網目が出来るタイプのメロン
だが、色が透き通った銀色なのだ。
「うん、まずは試食からだな。」
鋏で実を切り取ると、切断面からカラメルのような香りがした。
ストンと半分に切ってみるが、本来有るべきものがなかった。
「種が・・ない?」
増やす事も考えていたのだが、この一株を丁寧に育てていくしかないようだ。
八等分に切り分けると、四つを盆に載せる。




