記憶
その後も一週間ほど、ダンジョンでレベル上げを兼ねた収集と間引き
そこで得られた物を古谷さんの所へ届ける。
このサイクルを繰り返していたのだが
ついにダンジョンの存在が発表された。
それに伴い、政府から有志を募る話も出ているようだ。
この発表を皮切りに、海外からもダンジョンの発生が発表された。
正直な所、俺は一階層だけでも攻略しておけば
モンスターが出て来ることはないのではないかと考えている。
以前から、一階層を攻略するたびにその後
リセットされるまではモンスターが現れないことからの予想ではあるが。
政府や、企業の調査結果を楽しみに
俺はその後も間引きを繰り返して行った。
そして
レベル:※35 HP:250/250 技能:鑑定 幸運(微)
ついに二週目のレベルが上限に至った。
「よし、これで先に進んでも大丈夫だろう。」
今でも、一周めの四階層での恐怖は忘れられない。
早く先に進みたいと思うたびに、あの翼竜の存在がちらつくのだ。
己の欲に任せて行動したときは、必ず何処かに落とし穴があって
常に結果は裏目に出ていた。
俺は生まれ変わったのだ、この家を受け継いでから。
ならば、欲に走ることを抑えられる人間にならなければ。
そんな考えで、この数週間の間ずっとずっと我慢していた。
だが、それもここまでだ。
ついに踏み込んだ四階層には、翼竜が群れを成して飛んでいた。
「わぁぉ・・・・」
これはまずい
以前は一匹でいたからのラッキーパンチだった。
二週目の強化で、どれだけ強くなっているかわからない
そんな状況で、あの群れとの戦闘は命に関わるだろうと思い
俺はすぐに階段へ駆け込んだ。
階段から顔を出し、翼竜を観察していたのだが
樹上を飛び回っていた翼竜が、突然植物に巻き付かれて落下していった。
翼竜:空の覇者でとても強い
ミュータントウィップ:突然変異した蔓植物
「うん、え?なに?捕食してるの!?」
その後も、何度も何度も樹上へと伸びる蔓により
翼竜はどんどん落とされていく。
「うわぁ・・・凄い光景だな・・・」
これでわかったことは、この階で一番強いモンスターが
恐らくだが、ミュータントウィップであるということだ。
翼竜が捕獲されている状況を見ていればわかる。
異常なまでに速い速度で捕獲され
ゆっくりと手繰り寄せているような感じだった。
「どうやって食べているんだろう?」
一度だけ戦った事のあるミュータントウィップは蔓だけの植物だった。
興味はあるが、あまり追求しすぎるとこちらが食べられてしまう。
頭を振って疑問を蹴散らし、樹の下は歩かないように心がける。
ガサリと草を退けると、そこにはナメクジがいた。
「うわぁ!」
以前の記憶が一気に再生され、口の中に針が沢山生えてる光景が
頭の中を埋め尽くしてくる。
「くそ!またでてきやがって!!」
よくわからない、と言いたそうな表情でナメクジは散っていった。




