リスク
「これを調理してお客さんに提供すれば、才能のあるお客さんは良いほうに転びますね。」
それに、とつづけ
「恐らく・・・ですが、この苺は明日になればまた生ってますから。」
ちょっと多すぎるかもしれないですけどね、と笑いかける。
「井出さん!こんなに素敵な苺の苗を分けてくださり本当にありがとうございます!」
たった数日で何度も感謝されているので、いえいえと返すのが精々だ。
「何か私にできることはありませんか?ある程度までならば何でも申し付けてください!」
ん?
「それでしたら丁度新しいドロップ品があるのですが、これを使って何か作ってみてください!」
喰い気味で提案する。
元々こっちの話をメインに押しかけたのだから、ここぞとばかりに飛びついた。
「ほう、これは綺麗なお肉ですね。柔らかく、触った所から脂が溶けていく・・・」
古谷さんは大ネズミの肉を脇に抱えて、走って店に入っていった。
「いっちゃった・・・とりあえず裏口で待っていよう。」
正面玄関から入って、他のお客さんに遭遇するのは避けたかった。
お客さんを避ける理由として、単純に仕入先が俺の家だということを隠したかったからだ。
当然いずれはばれるだろうし、他のダンジョンが発見されれば
その待遇しだいでは俺も正式に発表する。
だが、現状で俺の家にはダンジョンが発生しています。
なんて声を大にして言うにはリスクが大きすぎる。
それに、他のダンジョンが発見される方が早いことを既に予想できている。
というのも、俺の家にはテレビやラジオは置いてないが
両隣の家には両方あるのだ。
その両隣からの情報には現在、モンスターと思われる奇怪な生物が
民家に押し入ったとの情報があったのだ。
危害を加えられたわけではないが、当事者はとても恐ろしい物を見たと呟いていたらしい。
その他にもインターネット上での発言で、家の隣に小屋が建っていたとか
登山家の方々の発言の、山肌に洞窟が開いていた
等、ダンジョンと思わしき場所はいくつか発見されているらしい。
それも現れたのは全て、地鳴りが起きた後だったと言う。
恐らくだが、あと数日もすればダンジョンの発生が公にされるだろう。
現在でも、様々な企業様方が社員を集めてピクニック気分で探索しようと言っているらしい。
他のダンジョンにも興味はあるのだが、俺の家にダンジョンが発生している間は
あまり長いこと家を空けることはできない。
モンスターが民家に押し入ったという情報があるくらいなのだ
俺の家だって例外ではない、いつモンスターが出てきて荒らされるか気が気ではない。
定期的な間引きこそが一番安心を得られるのだ。




