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散歩

「翠、いいか?」


もともとは翠のために植えた樹なので、翠に確認を取ってみる。


すると、翠はヒラトリの実を鼻で転がしながら運んで


古谷さんの前に転がすと、キュルルと鳴いた。


「翠、1個じゃ足りないと思うぞ?」


言い足すと、翠はあと二つ転がして


恨めしそうに古谷さんを見ていた。


「は・・・はは・・・」


古谷さんもこれには苦笑いしかできずにいた。


「ちょっと厳しいみたいですね」


ですね、と返してくれる古谷さん


そうだ、と思い出したので


「あおいの卵はどうですか?」


と提案してみた。



「あおいちゃんの卵・・・ですか?」


はい、と答え


「今は一日に二つ産んでくれるんですよ、逆を言うなら一日に二までしか卸せないんですがね・・・」


ははは、と笑い


「よかったら食べてみます?」


と提案すれば、古谷さんが作ってくれるそうだ。


今回、お願いしたのは卵焼きだ。


出汁も調味料も一切使わない、卵とごま油だけで作った卵焼き


古谷さんも興味を持ってくれたので、今朝採れた分を使って調理。


殻の青い卵を見て驚いていたが、それ以上に味の方が気になっていたらしい。



「おいしい・・・ですね・・・」


さすがです、と言葉を返してふんわりと焼きあがった卵焼きを食べる。


「どうします?自分達が食べる分もありますので、週に四回程なら卸してもいいですけど」


問いかければ、喰い気味で「お願いします!!」と返された。


「あ、そうだ」


ちょうどいい機会だ、ダンジョンで狩りまくって倉庫で眠っている肉もついでに卸そう。


頭を通っただけの案だが、古谷さんは二つ返事で引き取ってくれるそうだ。


そして、ついに料金の設定を決めることになったのだが、俺にはさっぱりわからない。


だから


「実際に使った分だけの料金で結構ですよ、値段の方は古谷さんで決めちゃってください。」


と、丸なげしたのである。


この土地には住人どころか、観光客すらまともに来ない。


大型のショッピングモールも、洋服店もコンビニもない。


小さなスーパーとホームセンターがあるだけで


車が走っているところなんて滅多に見ない。


そんな土地のはずだが、気分転換に散歩をしていると


二十分の間に、すでに三台は通り過ぎて行った。


「なんだろ?なにかあるのかな・・・」


車が走っていった方角にしばらく歩くと、大きな花輪を見せの前に飾ったお店が見えた。


こんな所に店を出すなんて珍しいな、とキョロキョロみていると


「あ、井出さんじゃないですか!」


と、声をかけられた。



「あれ?古谷さん?ってことはここが・・・・」


それなら納得だ、古谷さんが開店記念に友人でも呼んだのだろう


「実は本店の常連さん達が、今日が開業の記念日だって聞きつけたらしくて・・・」


なるほど、それにしても・・・


「本店ってことはここは支店ですか、実力のあるお店だったんですね。」


仕入先を個人で決められるのだし、自分でもオーナーを名乗ったのだ。


それに加えて、現在めの前でお客さんが列を作っている。


嫌でもわかる、ここは良いお店だ。


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