歓迎
「苗?何の苗だろ?」
ミュータントベリーの苗:非常な丈夫なベリーの苗で、果実は食用にもなる。
「おうふ、珍しく長めの説明文だ。」
変なところに感心してしまったが、食用となるなら庭で植えてみるのもいいだろう。
ホクホク顔でポーチに入れようとしたのだが、どうやら苗は入れられないようだ。
今回の探索はここで打ち切り、さっそく庭を耕して畑を広げる
あおいがクチバシで小さな石をどけてくれている。
翠も雑草を口で咥えて引っこ抜いてくれたので
思ったよりも短時間で済ませることが出来た。
そんなこんなで二日ほど経ったのだが、ここで初めて見るお客さんが来た。
まだ若いと感じるが、所々に白髪が見えるスーツ姿の男性だ。
「何かご用ですか?」
問いかけると、はいと答えた。
「まずは初めまして、このたびこの地で飲食店を開くことになりましたので、ご挨拶にお伺いさせていただきました。」
なるほど、何故この人の少ない土地に出店しようとしているのかと聞いたら
「地元の繋がりが強いところへ店を出してみたい」と思ってのことだそうだ。
「遅くなりましたが、私はオーナーの古谷でございます。」
古谷さんは三井家にも挨拶は済ませていて
そのときに少しの間お茶をしたのだが、そこで出してもらったゼリーが気に入ったようだ。
言うまでも無い、ヒラトリの実で作ったゼリーのことだった。
初めて食べた果物だったため、強く興味を示すと
三井さんが俺の家を教えてくれたとのこと。
「なるほど、それならばあそこに落ちてますよ。」
と、庭に落ちているヒラトリの実に指をさして見せるのだが
古谷さんはヒラトリの実ではなく、あおいと翠をガン見していた。
「あ、やっぱり珍しいですかね?」
と苦笑いで問いかける
すると、古谷さんはこちらを見て頷いた。
「ええ、珍しいです!こんなに美しい!鶏も!馬も!初めて見ましたよ!!」
最初の方こそ冷静に喋ろうとしていたが、すぐにハイテンションで語りかけてきた。
「井出さん!あの子達を譲ってくだ「ダメです!」えー・・・」
えーって・・・
「彼女たちはうちの大事な子供達ですから、譲ったりなんか出来ませんよ。」
それなら仕方ないか、とすぐに諦めてくれたので
悪い人ではないようだ、よかった。
「あおい、翠、おいで!」
そう呼ぶと、あおいが翠の頭にのって翠が駆けてきた。
よしよし、と撫でると
「こちらは古谷さんだ、この近くに住むことになったからよろしくな!」
伝えると、あおいと翠は声をあげた後に古谷さんに擦り寄っていった。
「おぉ、見かけとは違いふわふわな手触り」
なにか感動している古谷さんだが、あおいと翠はすぐに撤退していった。
「本題に入りますね、あの果物をうちの店にも卸してくれませんか?」
そういうことか。




