丸飲み
階段の近くからあまり離れていない事で逃げ切ることができたが
翼竜は階段の出口となっている大樹に空いた穴にはまっていた。
「ん?アイツ動けなくなってるのか?」
近付きすぎるのも危険なので、三層で倒したオオトカゲの皮を投げつける。
ギュェー!と鳴き声をあげ、翼竜はもがき続けるが
一向に抜け出せる気配は無かった。
「ふむ・・・」
翼竜があのサイズの穴にはまる事と、階段の狭さを考えれば・・・
「いけるか?」
内心ビビリながらもツルハシを構えて階段を飛び降りた。
飛び降りた勢いでそのまま翼竜の頭にツルハシを振るうと
カーンッと金属を打ちつけたような音が鳴る。
「まじかよ」
翼竜はとても硬く、何度打ち付けても傷一つ与えることができなかった。
「んー・・・こまったなぁ。」
翼竜が身動きを取れなくなっているのは嬉しいのだが
階段の出口を塞がれているので、この階層の探索に踏み切れなくなってしまったのだ。
今まで視線を外していたが、翼竜の目がずっとこちらを睨んでいる。
「わーお、ちょーこわい」
明らかに格が上の相手に足がプルプルしてしまうが
動けないならばと、無理やり奮い立たせる。
「あっ、そういえばアレまだあったっけ?」
ムカデと戦ったときのドロップアイテムをのことを、ふと思い出した。
ギャーギャー鳴いている翼竜も、ずっと口をあけているため
口の中に投げ入れるのも簡単そうだ。
「ふむ、使い道もないしやってみようかな?」
ポーチを調べてみると、溶解液が二つと
イモムシの酸も三つ入っていた。
「はははっ!びびらせやがって!」
このまま放り投げてもいいのだが、口を閉ざされたら意味が無いので
三層で倒したトカゲの尻尾にナイフで切れ目を作り、そこに収納していく。
当然その最中も、翼竜がガン見してくるので
理解されているのかな?と、少し心配になってしまう。
尻尾肉に収めた瓶がこぼれないように、ウサギの毛皮で肉を包むと
それを抱えて翼竜に近づいた。
「ほーら、ごはんですよー。たんとおたべ」
背中に冷や汗を流しながらも、翼竜の口に尻尾肉を蹴りこんだ。
蹴りこんだのはいいのだが、ここで予想外の事が起きた。
翼竜が、尻尾肉を丸呑みしてしまったのだ。
「えぇ・・・」
噛み付いて、その衝撃で瓶が割れることを想定していたので
予想外の出来事に少し心配になる。
気付けば汗だくになっていて、足だけじゃなく手まで震えていた。
だが、そんなことも杞憂に終りそうだ。
翼竜が先ほどよりも激しく暴れ始めた。
うまく瓶が割れたのならば、そこから溶かされていくはずだ。
そうしてみていると、翼竜が今迄で一番大きな声で鳴き
動かなくなった。




