翼竜
「おかしいな?花が咲いた様子もなかったんだが、イチジクみたいに育つのか?」
縁側から庭に出て観察していると、キュウリの支柱が一部折れていた。
「うわっ!なんてこったい!」
十メートルも上から落ちてきて無事な果実なのだから
支柱に当たれば折れてしまうのも当然なのかもしれない。
「しかし、ヒラトリの実ってそんなに硬かったっけ?」
以前拾ったものは、掴めば指が沈むほど柔らかかったはずだ。
庭に転がっているヒラトリの実を拾ってみるが、返ってくるのは以前と同じ感触だった。
「んー?」
不思議な事が起こるのは今更な気もするので、そういうものだと諦めて拾い集める。
全て冷蔵庫にいれ、庭に水をまいたら
今日のダンジョン探索が始まりる。
今日の目標は、オオトカゲ三匹を倒し、出現方法とレベルによる身体能力の上昇を再確認する事だ。
レベル:6 HP:75 技能:鑑定 幸運(微)
「うん、変わってないな。」
三層まで駆けながらレベルを確認
その足で大樹にツルハシを振るう。
キィーッ!と声をあげウサギが出てきた。
それと同時に背後からもオオトカゲが現れた。
オオトカゲに向かい、包丁で切りかかると
少しの抵抗の後に、ズプッとした感触が手に返ってくる。
以前の失敗もあるので、背後にツルハシを振るうと
ウサギが光になって消えた。
「よし、大丈夫だ。間違いなく強くなってるな。」
その後も同じように樹を壊し、穴を開けて倒していく。
「よし!これで確認は終ったわけだ。」
問題は階段の場所なのだが、実は心当たりがあった。
樹を壊してモンスターが現れるのならば、階段も同じだと。
三階層で一番大きな樹を壊せば、予想通りに階段が現れた。
一度大きく深呼吸をし、気合を入れて四層への階段を下りはじめる。
階段から出て後ろを見ると、大樹にぽっかりと穴が開いていた。
「なるほど、四層は三層とこの樹で繋がっているんだな。」
ふむふむ、と誰もいない空間で頷いていたが
頷いてた事に気づき、少し恥ずかしくなってしまった。
改めて周囲を見渡すと、三層とは違う景色だった。
木々が生い茂っているのは同じなのだが、その全てが三層の木々の倍以上の高さがあったのだ。
試しにツルハシをぶつけてみるものの、カンッと乾いた音と衝撃だけが返ってきた。
キョロキョロとあたりを見渡すと、自分を中心に大きな影が落ちた。
恐る恐る上を見上げると
巨大な鳥がいた。
「鳥・・・なのか?」
オオトカゲのような鱗に覆われた羽毛のない身体
それはまるで・・・
「プテラノドン・・・だっけ?いや、翼竜って言うのが正しいのかな。」
なんて言っている場合じゃない。
俺は急いで階段へ向かって走っていった。
幸いな事に物語のように火を吐いたりはしないようだが
その鋭く尖った嘴を見て、俺は冷静ではいられなかった。




