落下
戸惑っていると、後ろから衝撃が来た。
「いてっ!」
衝撃で前のめりに倒れ、後ろを見てみるとウサギがいた。
「わすれてた・・・そうだよなー、家壊されたんだもんな。」
さくっとウサギを狩ると、オオトカゲが落としたアイテムに鑑定をかける。
オオトカゲの皮:非常に頑丈なトカゲの皮
オオトカゲの尻尾:下処理されたオオトカゲの尻尾
なるほど、新たな食材アイテムが手に入ったという事だ。
「しっかしなぁ・・・トカゲの、ましてや尻尾の肉なんてどうやって調理すればいいんだ?」
「よし、燻製にしてみるか。」
尻尾だけでも60センチはあるので、今回の探索はここで打ち切る。
家に戻り、念のために消防に電話してから準備を始める。
三井家も岡田家も距離は離れているので煙の問題は大丈夫だろう。
本格的な燻製器は無いので、七輪を持ち出して炭に火をつける。
一口サイズに切り分けたトカゲの尻尾を網の上に置き、ボウルを被せていく。
脂が火種に落ちる心配があるが、今回は仕方が無い。
「ふぅ、まだ半分以上のこってるけど・・・保存はきくからいいか。」
いつのまにか十メートル程に成長しているヒラトリの樹に背中を預け
燻製器を気にしながらも、もぎ取ったキュウリを齧る。
「うん、いいんじゃないかな。」
ほんのりと独特の青臭さが残るキュウリは
ポリポリとした歯ごたえが心地よかった。
「ん、まずい。寝ちまってたか。」
急いで燻製器のボウルを外していくと、茶色くなった尻尾肉が現れた。
「はぁ、火事になって無くてよかった。暇つぶしも考えておかないとな。」
試しに一口かじると、切り分ける前の硬さが嘘のように柔らかくなっていた。
「んー!このスモーキーなにおい!たまりませんなー!」
お酒があったら最高だ!
「まぁ、俺は甘いのしか飲めないから関係ないけどな!」
ワインとかウイスキーなんかを飲めたら、また新しい世界が広がったのかもしれない。
だが、こればっかりは仕方がないことなのだ。
アルコール独特の匂いに焼けた喉の痛み
楽しく美味しく飲めないのならば、飲むべきではないだろう。
お酒にも農家さんにも、そして何より一生懸命に作ってくれた方々にも失礼だからな。
残りの七輪に載っていた尻尾肉を袋に詰めて、冷蔵庫に入れておく。
「次にオオトカゲを倒せたら四層に行こう。」
布団に潜り朝を待つ。
目覚ましが鳴るより先に、ドスンという音で目を覚ました。
「んー、なんだ?」
付近に引っ越してくるという話も聞いていないし、家を建てるという話も聞いていない。
心当たりがないので心配になったが、庭を覗いて納得した。
いくつかのヒラトリの実が転がっていたのだ。
恐らく、これが落下した音なんだろう。




