久しぶり
とりあえずの心配事が無くなったので、ふれあいの森計画を進めていこう。
と、その前に用事を片付けておこう。
中和剤の受け取りと海神王素材の引渡しだ。
中和剤は既にこちらへ運んでくれているので、届くのは時間の問題だ。
海神王の素材に関しても同じく、大型の保冷庫を乗せたユニックで引き取りに来るそうだ。
こちらへ到着するのはまだ時間がかかるとのことなので、こちらの用事を済ませようと思う。
まずはふれあいの森予定地の様子見、その後は古谷さんへのお願いだ。
そう、海神王の肉をおいしく調理してもらうためのお願いだ。
海神王の肉は赤身でも白身でもなく、肉と呼ぶには少し変わった色をしていた。
オレンジに近い黄色で、苺のような甘酸っぱい香りをしている。
不思議な肉だ。
一人ではとても食べきれない程あるので自分で試してみてもいいのだが、やはりプロに任せる方がいいだろう。
なんてことはない、ただの在庫処分でもあるのだが…。
海神王だけでなく、ダンジョンで入手した素材は倉庫で大量に眠っている。
その処理も間に合わないうちに今回の海神王だ。
流石に巨大生物がそのままドロップ品になってしまっては、それだけで倉庫に入りきらない量なので
院長がこちらに着いたときに、中和剤と入れ替えで孤児院へのお土産としてもらおう。
「古谷さん、お久しぶりです」
レストランの裏口で挨拶を交わした。
「今日は納品ですか? 少し早い気がするのですが…」
そう、古谷さんと石川さんの所へドロップ品を卸す曜日は決まっている。
しかし、今日はその日ではなかった。
「実は大物を仕留めたので、食べ方を調べてもらおうかと…」
そう伝え、ポーチから海神王の肉を取り出して見せた。
「ふむ、確かに変わったお肉ですね。 お預かりして色々試してみましょう。 時間はかかるかもしれませんが、必ず最高の調理法を探し当てて見せます!」
古谷さんが楽しそうに燃えている。
これは期待していいだろう。
さて、次はふれあいの森予定地の方だが
こちらは順調のようだ。
森にコンクリート柱を沢山建ててもらい、周りを金網で囲うように依頼してある。
更にその外側を大きく掘り、コンクリートを基礎として厚めの鉄板を埋め込んで壁とする予定だ。
ダンジョンに潜る前の俺であれば、工事費だけで卒倒するレベルの金額だった。
更に幾つもの企業に話を持ちかけ、合同で着手してもらっている。
今は金網の外側を整地している段階なので、まだまだ時間はかかりそうだ。
そうこうしている内に院長から連絡が入った。
もうすぐこちらへ到着するとのことなので、急いで家に戻らなければ。
駆け足で家に帰り、しばらくすると車の音が聞こえてきた。
「井出さん、順調に終わった様で良かったです。 お怪我などはありませんか?」
最初に声をかけてくれたのは水野さんだった。
「水野さん、お久しぶりですね。 今回は院長先生のおかげで助かりました」
そう伝えると水野さんが嬉しそうに車に駆け寄り、院長を連れてこちらへ歩いてきた。
「久しぶりですな」
「ええ、助かりました。こちらも何か手伝えることがあれば言ってください」