安堵
電話越しの澤城さんは元気そうだった。
「ふむ、毒物ですか。少し時間を頂けますか? 散散協力して頂いてもらって言うのも気が引けるのですが、私の独断で許可できる物ではないものでして…」
「ええ、勿論です。 特に急ぎということでもないのでよろしくお願いします」
よし、これで後は待つだけだ。
一日や二日で返答が来るとも思えないので、長らく放置してきた庭のモフモフパラダイスの対処だ。
何度言っても止めないクリスの暴走により増えすぎた庭のペット達。
その数は既に千匹を超えている。
勿論、ある程度のことは考えてある。
いくら増えすぎたからと言っても、家で生まれた生き物には愛着もある。
下手なところへ受け渡すこともしたくない。
古谷さんのレストランと、石川さんの旅館にも掛け合って何匹も飼育してもらっているので
これ以上の負担は負わせたくはない。
本人達はもっと多くても大丈夫だとは言うけれど、我が家の問題を押し付けているのは変わらないのだ。
そこで思いついたことがある。
この森の奥村にはまだまだ広大な空き地が存在する。
空き地だけではなく、自然も多く残っている。
ならば、やることは決まっている。
やること、つまり放し飼いだ。
勿論、ただの放し飼いではない。
このペット達が人に害をなさない事を知っているからできること。
ふれあいの森として、一般に開放するのだ。
無駄に集まる資金を使う事もできるので悪くない。
しかしペットでお金稼ぎをするつもりもないので、この森は無料で開放するつもりだ。
どれほどの人気が出るかはわからないが、来訪者数が多ければ旅館やレストランの売り上げにも貢献できるかもしれない。
あおいを筆頭としたチキン種の卵や、ルカを筆頭としたカウ種の肉もお土産として並べてみたり。
なんだか楽しそうだ。
色々と細かなルールを考えたが、そもそも俺はあまり騒々しいことが好きではないので
家から離れたところにある林を購入し、その足で防球ネットを設置してくれる会社へと訪問した。
「こんにちは、突然の訪問なのですがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。 建柱でしょうか?ネットの設置でしょうか?」
「えっと、設置だと建柱は別ってことでしょうか?」
「はい、勿論両方を同時に依頼されることも多くあります」
「ああ、よかった。 では両方の依頼でお願いします。 一応ですが、地図も持ってきてますので、ご確認ください」
「確認しました。 この範囲ですと結構な料金になってしまいますが大丈夫でしょうか?」
む、そうか。
いくらお金が余っていても、足りなかったら迷惑をかけてしまう。
「そうですね、とりあえず見積もりだけお願いしてもいいでしょうか? 他の企業に依頼することは無いので、払える金額で無ければ貯まってから再度依頼に来ます」
「ありがとうございます。 それでは見積もりが出来次第送らせていただきますね」
軽く挨拶を交わして店を出た。
それから三日後に家に届いた郵便をみて、思っていたよりも安い金額であることに安堵した。