白い塔
少しだけ元気が出たので、暫くサボっていたダンジョンの探索をすることにした。
ちょっぴり新鮮な気分だ。
見た目で何かが変わった様子は無かったが、何かが変わっている感じはある。
その違和感が気になり、ぼーっとしながら草原を見ていると
カサッと音がした。
魔物だろうか。
こんなに無防備でも襲ってくる様子も無いので近付いてみた。
トカゲだ。
ころっとした可愛いトカゲがいた。
プチ・ドラコ : ドラゴンの幼態
少なくとも今までは二階層にドラゴンと呼ばれるものは居なかったはずだ。
分布が変わったのだろうか?
手の平にのせたプチ・ドラコをそっと逃がして三階層へ向かう。
三階層は相変わらずだ。
人懐っこいモフモフのヒールラビットが沢山生息している、とても平和な階層だった。
所々にドロップアイテムが見えるが、恐らくサラマンダーが捕食した後なのだろう。
しばらくモフモフを堪能した後に四階層へ向かう。
ここにも変化があった。
壁が一面銀色で波打っているのだ。
手を入れればずぶずぶと埋もれていくのだが、引き抜いた手には何もついていない。
どんな物質なのだろうか。
よくわからないが、手を入れたことによってわかったこともある。
この銀色の壁の中には鉱石が埋まっているかもしれないということだ。
もう一度ゆっくりと手を差し込めば、コツンと指先に何かが当たった。
救い上げる様に手を引き戻したら、手の平には七色に輝く宝石が乗っていた。
七色鳥の卵 : 長い年月をかけて化石になった七色鳥の卵の化石
不思議な感じだ。
今までこのダンジョンでいくら採掘しても化石なんて出てくることは無かった。
偶然の可能性も低くは無いが、壁の変化も関係しているのだろう。
今後の採掘も楽しくなりそうだ。
しかし、何度か同じ場所で壁から鉱石を引き抜いてみたが、七色鳥の卵は出てこなかった。
期待していただけに少しだけがっかりしながら五階層へ向かう。
五階層は海中だったはずだが、階段を下りると砂浜に出た。
ここにも変化があったのだろうか。
目の前には大きな海があり、沖の方には島が見える。
試しにと海に入ってみたが、今まで通りに呼吸は出来たので海底を歩いて島へ向かった。
海底には様々な生き物がいた。
今までみた五階層の生物とは別の生物が何種類か見かけることが出来たのだ。
明らかに魚介類や甲殻類ではない様な生物も存在している。
その中でもよく見かけるのがコイツだ。
ブラックライガー : 目が光り餌を集める黒い狼
そこかしこでピカピカしているので嫌でも目立つ存在だった。
見た目は本当にただ黒いだけの狼だ。
空色の目をしていてピカピカ光っている。
水中なので動きは遅いが、もふもふの毛並みは移動するたびに前後にゆらゆらしていて可愛い。
ブラックライガーを観察しながら歩いていると、ようやく島に辿り着くことが出来た。
島はあまり大きくなかったが階段がそこにあったので、恐らくこのために作られたのだろう。
最下層への階段を下りれば、そこには宝箱があり
そこで探索が終わるはずだった。
塔のダンジョンへはコントロールルームからしか飛べないはずだが
階段の先には白い塔が存在していた。