沈静化
「俺も着いていっていいか?」
ガーゴイルは少し考えてから答えた。
「難しいな、今の貴様では足手纏いにしかならない。 それは貴様もわかっていることだろう?」
「足手纏いになるのは重々承知している。 無理を承知で頼む!」
どう足掻いても日本で、いや
地球でのレベル上げは限界だ。
それで足手纏いになるのであれば、心苦しくはあるが寄生していくしかないのだ。
「駄目だな、連れて行くことはできない。 だが、捕縛した奴と面会させてやることは出来る」
やはり無理か。
しかし、面会が出来るというのであれば塔の攻略は任せてしまった方がいいのかもしれない。
「わかった、面会が出来るのであれば全て任せる」
「任せておけ、塔の攻略に関わるのは我だけではないからな」
「そんなに危険なのか?」
「危険…、とは少し違う。 奴は少なくとも二つの世界に混沌を招いた。 今後何をしでかすのか解らないから対処できる者を連れて行くのだ」
よくわからないが、塔の攻略はそこまで危険ではないと。
「そうだな、貴様には教えてやってもいいかもしれん」
「何かわかったことがあるのか?」
「ああ、だが貴様にはあまり関係が無いことだがな」
ふむ。
「聞くか?」
「頼む!」
わかった、と一度頷くとガーゴイルは語りだした。
「新しくわかったことは二つだ。 一つは今回の件に関わっていた世界は三つあること。 これは貴様の世界と我の世界、そして第三の世界が関わっているということだ。 ただ、その第三の世界が被害者なのか加害者なのかが不明である。 二つ目は今回の黒幕の出身が地球、つまり貴様の世界であることがわかった」
「はっ!?」
異世界があったのだ、今更いくつか世界が増えたとこで違和感は無い。
だが、二つ目は衝撃が強かった。
「どういうことだ? どうして地球の人間がそっちにいるんだ?」
「無理も無い、我も気になり何度も調べた。 だが、結果は同じだったのだ」
「そうか…有難う。 黒幕との面会の準備が出来たら教えてくれ」
「勿論だ。 少し時間を取りすぎた、我は行く」
「ああ、俺も帰るとするよ」
片腕を上げて歩いていくガーゴイルの背を見送り、俺も家へと帰った。
「あ、お兄ちゃんお帰り! ご飯できてるよ!」
「そうか、ありがとう」
「何かあったの?」
「少しな」
ガーゴイルとの会話から一週間経つが、一度も連絡はない。
地下のダンジョンへと毎日通ってはいるのだが、ガーゴイルと会うことも無かった。
未だ塔の攻略を続けているのだろうか。
それと、気になっているのは第三の世界だ。
直接こちらの世界に関わってはいないようではあるが、今後どの様に関わってくるのかがわからない。
そして、日本に出没したダンジョンは少なくない被害を出して完全に沈静化した。
海外のダンジョンでは未だ多くの被害を出しながらもモンスターを倒しているそうだ。