朝ご飯
何も難しいことはない。
うちのペットは皆かしこいので、放って置いても何も問題はないし
食事に関しても小食で、餌もウォフラ草が主食である。
そして、そのウォフラ草も開拓した畑に大量に伸びている。
「そんなことでいいの…?」
不安そうな顔で見上げてくるが、それでいいのだ。
「ただ、一つだけ条件がある。 それをのめるのであれば、住み込みで働いて欲しい」
「うん、わかった! 条件を聞かせて!」
「地下のダンジョンへは入らない。 これが条件だ」
「うん…。 うん! 私を雇ってください!」
こうして、妹はこの長屋に住み込みで働くことになった。
「細かいことは明日にしようか。 とりあえずこんな時間だ、今日は寝よう」
「う…うん…」
「どうした?」
「なんでもないよ! 大丈夫だよ!」
何が大丈夫なんだろうか…。
「そうか、じゃあ布団はこれを使ってくれ。 おやすみ、ゆっくり休めよ」
「うん、おやすみなさい! お兄ちゃん!」
そして夜が明けて、いつも通りに目を覚ました。
さあ、今日は古谷さんの誕生日だ。
朝ごはんの準備をしにキッチンへ向かうと、妹がエプロンをつけて立っていた。
「あ、お兄ちゃん! おはよう!」
「お…おう。 ゆっくり休めたか?」
「うん! 緊張して早く起きちゃったからね、とりあえず初仕事ってことで朝ご飯を作ろうと思うんだけど…」
ああ、材料か。
「材料は好きな物を使っていいぞ。 ストックは存分にあるからな」
そう言って、使っていない小屋へと案内した。
「すごい、こんなに沢山…。 でもこんな雑な保管の仕方で大丈夫なの?」
「ああ、何故かダンジョン産の食材は傷まないんだ。 不思議だよな…」
「そ…そうだね…。 朝ご飯はこのお魚とお米でいいかな?」
「ああ、頼んだ!」
妹が選んだのは、ミラージュフィッシュと黄金米だ。
庭の動物たちと戯れていると、妹が呼びにきた。
「ごはんできたよ! 朝はこんなのだけど…いいかな?」
シンプルにミラージュフィッシュの塩焼きと黄金米、それに味噌汁だった。
「あれ? 冷蔵庫に味噌なんていれてたっけ?」
「あ、それは自前のだよ!」
味はなかなか美味しかった。
「ところでお兄ちゃん。 私は何をすればいいのかな?」
「あー、そうだな。 とりあえずはご飯を作ったり、家でゴロゴロしたり動物と戯れたり…かな?」
「え…、それだけ?」
「そう、それだけ。 と言っても、ダンジョンに潜ってない時の俺がいつもそんな感じだからな」
「ホワイトだね…。 のんびりするのなんて何年ぶりだろう…」
「そこそこ程度にやってくれればいいさ。 俺はこの後少し用事があるけど、お前も来るか?」
「ご近所様に顔合わせだね! 緊張するけどがんばるよ!!」
「はは、皆良い人ばっかりだから大丈夫だよ」
食事を済ませ、妹と二人でレストランへと向かい歩く。
「昨日家を飛び出すときに調べてたから知ってはいたけど、あの有名レストランと老舗旅館の支店がここにあるんだね…」
「知ってるのか?」
「うん、すっごく有名なんだよ? 私も何度か接待で利用させて貰ったりしてるし…」
驚いた、まさか妹が利用していたとは…。
「さ、ついたぞ。 ここでノックをするんだ。 表から入るときはお客さんのときだけな」
「うん!」
ドアをノックして、出てきた従業員の方に話して古谷さんの手が空くのを待つこととなった。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「それ、勝手に食べてるけど…」
「ああ、これか。 これはミュータントベリーって言ってな、ダンジョンで拾ったのを古谷さんにあげたんだ」
思えばこのミュータントベリーも事件に巻き込まれたんだよな…。