ルール
ガーゴイルの案内は続き、五階層の海中へと進んでいく。
「あの泳いでいる魚を捕まえてみろ」
海底から上を見上げると、少し赤みを帯びた魚が泳いでいた。
「あの赤い魚か…」
五十センチ程の大きさを持つため、少し梃子摺ったが捕獲は出来た。
「待たせすぎだ」
「仕方がないだろ、速いんだよ」
「ふん、まあいい。 齧ってみろ」
「は? このまま?」
「そのままだ」
「鱗とかとらなくていいの?」
「構わない、齧れ」
ガーゴイルに言われて渋々齧ると、苺の様な香りがする。
真鯛の刺身よりも少し甘く感じるが、香りは間違いなく苺の香りだ。
「どうなってるんだ?」
「それはベリーフィッシュと言ってな、改良されたダンジョン魚の一種だ。 日によって獲れる魚もかわるから気をつけろ」
「ああ、わかった」
「うむ、では次だな。 あそこを見てみろ」
ガーゴイルが指を指した先には、巨大な蟹が歩いていた。
「あー、あの蟹に挟まれると痛いんだよね…。 前に手を挟まれたわ」
「間抜け。 仕方がない、我がとって来てやろう」
「頼んだ!」
もう挟まれたくないし。
ガーゴイルが蟹をとってくると、先程まで生きていた蟹が死んでいた。
「やっぱり一定時間抑えてると死ぬのか?」
「そうだ。 ダンジョンでは大体そうなっている筈だぞ。 それがルールだからな」
気になったので聞いてみる。
「ダンジョンのルールって何だ?」
「ダンジョンは娯楽施設だからな、国の法によって定められたルールが幾つかあるのだ」
「成る程ね、営業許可みたいなものか」
「そうだな、簡単に言えば似たような物だ」
ガーゴイルと話していると、目の前に海老が通った。
「あれは?」
「スパイスシュリンプだな」
「たまにド直球な名前がついたのがあるけど…なんで?」
「製作者のセンスによるものだ。 気にするな」
「センスね…、お前も名前をつけたりするのか?」
「当然だ。 教えないがな」
口を閉ざしたガーゴイルが歩き始めたので、俺もそれに従い歩いていく。
「少し寄り道したが、今回の目的はこの先だ。 期待していいぞ」
ガーゴイルがここまで言うんだ、本当に期待していいのだろう。
「報酬部屋と言うのだがな、ダンジョンを踏破した物に対する褒美が置いてあるんだ。 主も何度か訪れただろう?」
「ああ、今でも使い道がわからない物もあるくらいだ」
「鑑定の技能は手に入れたのだろう? 何故わからない」
「効果はわかっても使い方がわからないんだよ。 これなんだけどさ」
ポーチから魔術師の杖を出して見せる。
「難しい物ではない。 これが使えない原因は主にあるな」
「俺に?」
「そうだ、使用に必要なMPが足りていないだけだ。 レベルを上げれば使えるかもしれないな」
「レベルを上げるって…、ダンジョンが沈静化されても上げることが出来るのか?」
「出来るがアイテムが必要だ。 このダンジョンならば必要なアイテムも採れる、安心していい」
そんなアイテムがあるのか…。
「ほら、ついたぞ。 はやく中に入れ」
言われて進むと、宝箱が部屋の中心に置いてあった。
「これはランダムボックスと言ってな、日に一度中身が変わる。 勿論、取り出しても翌日には補充されるぞ」
「ランダムってつくと言うことはやっぱり?」
「うむ、何が入っているかは開けてからのお楽しみだ」