採取
見ればわかるとのことなので、大人しくガーゴイルの後ろをついて歩く。
ゆっくりと階段を下りていくと、二階層は前と同じウォフラ草の草原だった。
「前と同じか、ウォフラ草は庭でも育ててるから用は無いかな…」
「いいのか?」
ん?
「ウォフラ草だろ?」
「ああ、ウォフラ草だな。 だが他のは素材はいいのか?」
「他のって…、他にもあるのか?」
「なんだ、知らぬのか? ウォフラ草は知ってるのに…おかしな奴だ」
「なんだよ…」
「ウォフラ草の根元を掘ってみろ」
ガーゴイルの指示通りに、ウォフラ草の根元を掘り起こす。
すると、芋の様な物が付いていた。
クリイモ : 甘みを持つ芋の仲間
「芋か…」
「ああ、それは生でも食せるぞ。 齧ってみるといい」
言われて齧ってみると、加熱していないのにホクホクとした食感と
その後をふんわりと追いかけてくる甘みがあり、なかなか美味しい。
「うん、美味い」
「気に入ったか? こっちもどうだ?」
そう言って、ガーゴイルが持ってきたのは巨大な人参だった。
オオアカネ : 大根のような人参
見たままの説明だ。
「これは煮込みにすると美味い。 仲間からの情報では、こちらの世界の方が調理の方法は多いみたいだからな。 色々やってみるといい」
「調理法って…、そっちの世界では少ないのか?」
「ああ、少ない。 煮るか焼くかだな…」
「文明が進んでいる割には原始的だな…」
「これには理由があるのだ。 こちらの世界とは違い、あちらの世界では食材そのものを改造し続けてきたのだ」
「こっちの世界でもやってるぞ?」
「そうだろう。 だが、文明の差というものだろうな。 そもそも料理というものを知らない者が多いのだ」
どうやってご飯を食べるのか聞いたら、基本的に生で齧るらしい。
とんでもない世界だ。
「話はそれたけど、他にもあるの?」
「ああ、今回はもう一つあるな。 これだ」
香ショウガ ニンニクの様な匂いを持つ生姜
「使い勝手が悪そうだな…」
「そうでもないぞ? なかなか良い薬になるからな」
「ふーん…」
薬?って聞きそうになったが、ここはスルーさせてもらおう。
少し考えて、俺は気になったことを質問する。
「なあ、今さ。 今回はって言った?」
「言ったな。 ダンジョンの資源は毎回変わるんだ、当然だろ?」
コイツとんでもないこと言いやがった!
「毎回変わるって事は、同じものは手に入らないのか?」
「そんなことは無いぞ。 毎回変わると入ったが、正確にはランダムで入れ替わるだけだ」
それなら大丈夫…なのだろうか…。
「まあいいか、次の階層を見に行く前に採取していってもいいか?」
「ここは既にお前のダンジョンだ、好きなだけもって行けばいい。 我も手伝ってやろう」
少しだけのつもりだったが、結構長く採取していたようだ。
気付いたら、デジタルの腕時計が深夜2時を表示していた。
「すまない、案内はまた今度お願いしてもいいか?」
「構わぬ。 我も今はここで連絡を待つだけの身だからな、気になることがあれば聞きに来い」