成長
三井のおじさんの家と、岡田のおばちゃんの家は
俺の家を挟んで左右に建っているため、一度家の前を通り過ぎる。
それから五十メートルほど進むと、色褪せた屋根瓦の家が見える。
「おはようございます!岡田のおばちゃんいらっしゃいますかー?」
玄関をノックしてから、ガラガラっと玄関を開け
正面に広がる土間から挨拶をする。
「はいはい、おきてるよ。おや、さー君じゃないか。」
どうかしたのかい?と優しく聞いてきた。
「うん、ジャムを作ったからおすそ分け!三井さんにもあげてきたよ!」
「ははは、ありがとうね。だけど無理はしちゃいけないよ?ほら、傷を見せてごらん。」
傷?と腕や足を見てみると、草で切ったのか切り傷がたくさん出来ていた。
「あ、全然気づかなかった!」
「気をつけなさいね、切り傷だって馬鹿に出来ないんだよ?」
「はい!気をつけます!」
消毒をしてもらい、地下にできたダンジョンのことを話すと
「そんなこともあるんだねぇ・・・」
と笑い流してくれた。
あ、これは信じてないやつだ!よし!
「このジャムもダンジョンで取れた蜂蜜と果実を使ったんだ。」
と付け加えて説明しておく。
「へぇ、確かにあまり見ない色だね。」
「うん、美味いからまた感想聞かせてよ!」
「はいね、いつも言っているけど何か困った事があったら相談しに来るんだよ?」
はーい、と返事をしながら手を振って家に帰る。
さて、最近ポーチ以外にも道具に変化が現れた。
メイン武器となるツルハシだ。
以前、柄が真っ赤に染まり家に帰ってから洗おうとしたのだが
綺麗になっていたのだ。
それが最近、柄は白っぽく綺麗なままなのだが
刃の部分が真っ赤に染まっていたのだ。
洗っても落ちない事を含めると、やはりダンジョンの影響だと考えられる。
見た目以外がどのように変化したのかはわからないのだが・・・
特に悪いことではないと思う。
縁側から畑を見渡すと、若干の空きスペースがある。
肥料にならないかと、ヒラトリの皮を畑に撒いてみた。
特に植えるものも考えていないので、ついでに種も埋めておいた。
「んー、こうしてみると結構暇だな。」
休みと決めたいじょう、今日はダンジョンには行かない。
「久しぶりに昼寝でもするか。」
チリリンと、風鈴の鳴る音が聞こえる。
「ん・・・」
眠い目をこすりながら身体を起こすと、景色は茜色に染まっていた。
「あー、ちょっと寝すぎたかな。」
グラスの氷は既に溶けていた。
「んー!はぁ、片付けるか!」
出しっぱなしにしていた農具を片付けようとして気づいた。
「なんだこれ?」
綺麗に育ったキュウリの横に、五メートルほどの樹が生えていた。
心当たりはあるのだが、信じられない。
軽く叩いてみると、中身は空洞のようだった。
「マジかよ・・・」




