ワンワンピヨピヨ
ガーゴイルに言われてから半月経つが、残念なことにダンジョンの踏破は出来ていない。
政府への連絡は既に済ませているのだが、問題は別のところにある。
他の探索者の同意が得られないということだ。
一攫千金を夢見て探索者になった者は少なくない。
会社を辞めて探索者になった者も少なくない。
そんな彼らが今後、ダンジョンがどの様になるのかを聞いてしまえば
あっさりと承認してくれるようなことはまず無いだろう。
放っておいても、あと半月で出された指示が全てのダンジョンへ届くの言うのなら
尚更クレームが飛び交うことは必死だ。
ここで、しっかりと対応をしておけば
少なくとも、幾つかのダンジョンは踏破することは出来ただろう。
しかし、政府は対応を間違えた。
強制的に、探索者たちの排除をしにかかったのだ。
その結果、探索者による暴動が起きた。
そこそこ時間が経ち、探索者のレベルも上がっているため
無傷で取り押さえることなど出来ない。
それに味をしめて、探索者たちはダンジョンに引きこもってしまったのだ。
俺としては、自分の家の周りだけでも安全ならば構わない。
だからこそ、他のダンジョンで誰が何をしていようと知ったことではない。
しかし、しかしだ。
政府に恩を売ることに意味はある。
正直なところ、政府に対する恩売りは何度もしていると思うが
売れる恩は売っておこうと思ったのだ。
今や日本国内での探索者が占める割合は、既に5%を超えている。
様々な企業でも、人手不足が問題化している。
単純に考えれば、物流すらも混沌としている状況なので
少しでも多くの探索者には、早く夢から覚めてもらいたいものだ。
早く何とかしたいのだが、俺はまだ動くことが出来ない。
政府から待ったをかけられて、政府の動き方に左右される立場にあるのだから…。
そんな俺は、日々をどう過ごしているのかというと
殆どが散歩と昼寝の毎日だ。
ダンジョンのおかげで、資金は腐るほどあるのだから
どこかの会社で働くことは、全く考えられないのだ。
これが今の探索者たちの夢なのだろう。
この暇な時間と膨大な資金を使い、森の奥村で余っている土地は全て購入した。
理由は単純で、フレイを筆頭にした犬型の魔物やあおいの子供達が
モミジと陽だけではなく、大量に孵化している現状にあったからだ。
別に、俺が増やしたわけではない。
犯人はクリスだ。
奴はヒヨコの状態の鶏達が可愛いからといって、考え無しに孵化させまくっていたのだ。
そんな孵化した彼らだが、ご存知の通り成長するのはものすごく早い。
結果、朝から夜までワンワンピヨピヨ
餌代に困ることは無いし、可愛いので許せるが
やはり、勝手に増やされたことに関しては納得できない。
かといって、折角生まれた命を無闇に潰すこともしたくなかった。
だからこそ新たに土地を購入し、彼らが窮屈な思いをしないようにしたのだ。
沢山の鶏が生まれ、沢山の犬が生まれ
美味しい卵の収穫量が増えたり、強力な番犬が増えたと考えれば
俺もクリスを責めることはできなかった。