昼夜
そのダンジョンでは、モンスターが溢れ出した後
ダンジョンの入り口付近から赤い霧のようなものを吐き出した。
だが、その赤い霧はすぐにダンジョンに戻っていったという。
しかし、それに触れた人やモンスター・建物までが
赤い霧が晴れる頃には消滅し、更地になっていたのだ。
聞けば聞くほどに理解が出来なくなってくる。
ただ、残された現場では確かに何も無かったのだ。
これ程のことがあったのだ
生存者も嘘を言っているようには思えない。
現在、解っているのはそこまでだ。
これからも調査をしながら纏めていくとの事。
この話は、各国のお偉方へと伝わり
同じような方法で踏破しようとしていた国では
すぐに方針を変え、ダンジョン別にレベルを作り
低レベルでも安全にレベル上げができるシステムを作るため
出現ダンジョンの把握や、探索者の数等を管理し始めたという。
確かに探索者の育成は大事だと思う。
だが、本当にそれでいいのだろうか。
育成するにしても、一日や二日で何とかなるほど簡単には行かないはずだし
何より、攻略が後回しになるダンジョン付近の危険度が跳ね上がってしまう。
いずれにしろ、俺にはよく解らないことだ。
俺はただ、自分の家のダンジョンをなんとか出来ればいいのだ。
国を救う英雄にも、世界最強の探索者になることにも
たいした興味は無いのだから。
「他国も大変なんですね…、それじゃ俺は今日も行ってきますね」
「あ、はい。 頑張ってくださいね!」
澤城さんに見送られ、今日も樹海へと入っていく。
遊歩道と、その周りには入り口は無かったという。
俺が先日調べたところにも無かった。
広大な土地なので、中々見つからないのも無理はないのだが
少しだけ引っかかることがある。
この違和感はなんだろうか。
樹海では、今日もスライムが元気よく跳ねている。
今日は、ある程度進んだところで
遊歩道から大きくはずれて、歩き辛い所へ進んでいく。
ここでも少しだけ違和感がある。
ただ歩き回るだけというのもつまらないので
跳ねるスライムを捕まえては潰して歩いた。
そして、日が暮れる頃に違和感の正体に気付く。
それは、同時にスライムが消える時間だ。
捕まえたスライムを潰そうとしたその時
掴んでいたスライムが消えたのだ。
だが、確かに手には何かを掴んでいた。
そこへ視線を持っていくと、小さなトカゲだった。
違和感の正体
それは、昼間の樹海では見当たらなかった野生動物だ。
夜になれば、これでもかと言わんばかりに聞こえてくる鳴き声は
全てがモンスターのものだとしたらどうだ。
昼間はスライム、夜は動物型のモンスター
昼夜でモンスターが変わるのは俺の家のダンジョンでも目にしている。
その証拠に、今掴んでいるトカゲはあきらかにモンスターだ。
全身が半透明で、掴んでいる感触はゴツゴツしている。
クリアリザード:半透明な身体を持つトカゲ
久しぶりの鑑定さんで確認し、澤城さんへと報告をしに戻った。