応援
日は完全に落ちきった。
真っ暗な樹海の中に、独りだけだと思うとぞっとする。
しかし、気付いたこともある。
飛び跳ねていたスライムが影も見えなくなってしまったのだ。
見えなくなったのではない、居なくなったのだ。
少なくとも先ほどまでは跳ね回っているのを確認しているが
その跳ねたスライムですら、着地する前に消えてしまったのだ。
どうなっているのだろうか…。
スライムが木々に当たる音の変わりに、今度は野鳥の鳴き声が聞こえてくる。
ホーホー…
ホーホー…ホーホー・・・
どうしよう、めちゃくちゃ怖い。
辺りが真っ暗なこともあり、もはや気分はホラーな感じだ。
あれはモンスターなのだろうか?
それともただの動物なのだろうか・・・。
想像することしかできないが、あちらから仕掛けてこない限りは手を出さない方がいいだろう。
周囲を警戒しつつも、探索を続ける。
数時間歩き回ったが、ダンジョンに関するものは何も見当たらない。
レベルのおかげで体力は持つのだが、精神の磨耗が激しすぎる。
足場が悪く、歩き辛い。
小動物が走る音や、鳴き声が
やけに大きく聞こえ始め、周囲が少しだけ明るくなってきた頃
一度家に戻り、食事をとった。
疲れた身体に鞭を打ち、樹海のダンジョンの受付を訪問した。
「おはようございます。何か新しい情報は得られましたか?」
広大な樹海と言えど、大人数で探索すれば何かを見つけられるはずなのだ。
少しでも情報が増えればと、若干の期待を込めて澤城さんへと投げかけた。
そして俺は、澤城さんの言葉により知る事になる。
一国が破滅したことを。
国名は伏せられたが、ここで知らなくても
近いうちにニュースに取り上げられるだろう。
その国は、所謂独裁国家というやつで
国民をどんどん徴兵し、自国に発生したダンジョンへと
無理やり突撃させたのだとか。
最初こそ、多少は倒すことが出来たのだが
レベルアップで強化された探索者が、大量のモンスターに押しつぶされてしまったそうだ。
兵を倒し、経験値を得て強化されてしまったモンスターは
ダンジョン内で増殖し、そうとは知らずに第二陣を送り込んだ結果
人間という餌を与えすぎ、ダンジョンから溢れたモンスターが国中で暴れまわった。
弱体化しているとはいえモンスターはモンスターだ
平常時であれば何とか倒せたであろうそれらだが
動けるものは皆ダンジョンへと飲まれてしまった。
現状では、モンスターを倒せる探索者が居ないわけで
人を喰い、強化を繰り返すモンスターに手も出せず
最後には生きているものは、数人しか居なかったという。
応援に駆けつけた隣国は、モンスターを倒しつつも
生き残りに話を聞き、聞き出せた内容が以上のことだそうだ。
そして、不思議なことに
隣国の探索者が何度も探したのだが
ダンジョンそのものが消えていたのだ。