報告通り
次の目的地
それは、静岡にある樹海のダンジョンと呼ばれている場所だ。
この場所は、他のダンジョンと比較すると
段違いと言ってもいい程に、政府により入場が規制されている。
他のダンジョンでの受付で、人手が足りないのはこの為でもある。
青木ヶ原の樹海に、突如として発生したこのダンジョンでは
現在、スライムのみが発見されている。
樹海の名に恥じない程に広さを誇るそこには
木々の間を跳ね回る、十円玉程度の大きさのピンポン玉が跳ね回っていた。
コメットラットと同じ要領で、ウサギの皮を使い捕獲すると
今まで跳ね回っていたそれは、俺の掌を這いまわる
くすぐったい…。
そして、掌の端まで這ったそれは
俺の掌から落ち、その後
着地と同時に物凄い勢いで跳ねて行った。
なるほど、そうやって跳ねていたのか。
手順は逆になってしまったが、ひとまず到着の報告をしに受付へ向かう。
遊歩道があるため、とても歩きやすいのだが
たまに跳んでくるピンポン玉、もといスライムが鬱陶しい。
程なくして受付が見えてきた。
ふと気になり、近くの木をコンコンと叩いてみたが
どうやら空洞にはなっていない様だ。
となると、このスライム達はダンジョンから溢れたモンスターという事になるのだろう。
考えていると、いつの間にか受付の目の前まで来ていた。
「こんにちは、井出です。 話は通っていると聞いたのですが…」
「井出さんですね! 私は澤城と申します。お待ちしておりました!」
軽く挨拶を交わし、現在の状況の説明を受けた。
やはり、この飛び回っているスライムは
ダンジョンから溢れ出したモンスターで間違いないようだ。
ダンジョンから溢れたモンスターは
ダンジョンでの強さの数倍弱くなるが、いくら倒してもレベルは上がらない。
その為、いくら討伐しても効率は変わらず
倒しても倒しても湧き出てくるとのこと。
アイテムのドロップも確認されていないので
こちらもダンジョン内だけの物となっているのだろう。
「わかりました、入り口はまだ確認されていないのですか?」
「はい、遊歩道の周辺に無いことは確実だと思いますが…」
ふむ、となるとそれ以外の場所か。
まあ、迷ってもすぐに戻れるし何とかなるでしょう。
「わかりました、それではすぐに向かいますね」
澤城さんと別れ、再び樹海に足を踏み入れた。
丸一日歩き回ったが、入り口は見当たらない。
途中、跳ね回るスライムを捕殺したが
報告通り、アイテムはドロップしなかった。
昼間は綺麗な自然に囲まれて、遠足気分だったのだが
夜中になると怖い、ただただ怖い。