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討伐対象

「それは…」


榊さんが言葉に詰まっているが、解らなくもない。


俺だってそう思ったのだから。


「このダンジョンの生還者は人を斬っています」


そして


「本当に恐ろしいのはここからです」


俺の予想通りであるのならの話だが


「それは、このダンジョンが一体の強力なモンスターを生み出す機関だということです」


間違いなくレベルが一桁では対抗できないダンジョンなのだ。


初期の頃ならまだ良かっただろう。


だが、人を殺し


仲間を殺し、ただ一体だけ生き残るための地獄。


そこで生まれ、育った魔物なのだ。


ろくにレベルも上げていない人間が立ち向かうことはできるはずもない。



「公開されてはいませんが、人やモンスターにはレベルと言うものが存在します」


「レベル…ですか…」


「はい、ダンジョンの中でのみ上げることができるのですが、モンスターや…その…人を殺した場合に経験値が入ります」


「なるほど、井出さんがそれを口にするということは…見えるんですね?」


「自宅のダンジョンへ潜った際に、鑑定と言うスキルを手に入れました。 だから細菌にも気付けたんです。 場合によっては他のダンジョンも…」


「いえ、今のところ他のダンジョンは大丈夫です。 順調ではありませんが、二階層まで探索が進んでいるダンジョンもありますので」



榊さんは俺の心配に被せて説明をしてくれたが、それでもまだ一週目なのだ。


何故探索が困難になっているのかは、今回の訪問でわかった。


単純な話だ。


多くの探索者がダンジョンで亡くなった。


モンスターや、人を殺せば経験値は入ってくる。


それは逆も言えることであり、モンスターにも経験値は入るのだ。


当然、レベルが上がるのだから手がつけられなくなる


それでも何とか進んで二階層なのだとか。


「成程、他のダンジョンの状況は理解しました。 ですが、今はこちらです。 すぐに閉鎖してください!」



もちろん、閉鎖せずとも防護服を着れば探索もできるだろう。


だが、相手は細菌といえどモンスターだ


消毒薬を散布したところで、どれほどの効果が見込めるかもわからない。


それにだ、防護服を着ながら強化されたモンスターと戦うのはとても難しいと思う。


しかし、俺には抗体の腕輪がある。


細菌が身体に入ったところで消滅するだけなのだ。


「榊さん、このダンジョンを攻略するために防護服は必須です。 最初の問題として、強化されてしまったモンスターの排除にかかろうと思います」



連絡を済ませ、俺はすぐにダンジョンへと急いだ。


今後の動きがどうなるにしろ、一番の問題は強化されたモンスターなのだ。


改めて見回すと、一階層は約三百メートル四方の大部屋だった。


天井には小さな穴が開いており、そこから細菌が入り込んでいるようだ。


これは少し厳しいかもしれない。


モンスターの湧き出すダンジョンを潰さなければ、この状況が延々と続いてしまう。


そして、その討伐対象は部屋の真ん中で吼えていた。


しかし、どうしても恐ろしいとは思えなかったのだ。




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