携帯
みーちゃんはしばらく考えた後に口を開いた。
「一緒に来てる上司がいるんだけど・・・。 この話に参加させてもいいかな? 私だけじゃちょっと判断できなくて・・・」
そうなるだろうな。
「いいよ、迎えに行こうか」
未だに群がっている記者達の方に歩みを進め、レイズとプラムの頭に手を置いた。
「お疲れさま、もう休んでていいよ。 ありがとな」
レイズとプラムは後方に駆けていったが、玄関から少し距離を取り
その場で待機していた。
「まったく」
休めと言ったが、いざというときに駆けつけてくれるのは有り難い。
さて、これじゃ上司が誰かなんてわからないな。
わからないなら聞けばいい。
「この子の上司の方はいらっしゃいますか? 少しお話したいことがあるのですが」
すっと手をあげたのは三人だが、みーちゃんを見ると明らかに困惑している。
「誰が上司なの?」
みーちゃんに聞くと、手を挙げた人の中から二人を連れてきた。
「あの人は?」
「何度か見たことがありますが・・・。 我が社の記者ではありませんね。 あ、失礼いたしました。 岡島の上司で大林です」
名刺を取り出し渡してきたのでこちらも両手で受取った。
「ご丁寧にありがとうございます。 早速本題に入りたいのですが、その前に・・・」
先ほどよりも近寄ってきている記者達に向かい一言告げる。
「貴方達が車を停めている場所、踏み荒らしてきた畑は私有地です。 即刻退去してください、でなければ通報しますので」
これで多少は静かになるだろう。
「さ、いきましょうか」
三人を連れて再び縁側へ戻ると、座るように促した。
「お待たせしました、早速本題に入りましょう」
一通り説明すると、大林さんから返答が返ってきた。
「申し訳ございません、この案件は本社の方に一度戻ってから検討してみます。 他社へ牽制して置く必要も出てきますので・・・」
確かに・・・。
あの人の言うことを聞かないような連中を抑えるための切り札は何かしら必要だろう。
「先ほどの話にもあったように、今後は岡島さん以外の方に話すことはないですからね。 この件が却下された場合は当然・・・」
何も話すつもりはない。
だが、そこまで言わずとも大林さんは頷いて
「絶対通して見せます!」
と、言い切ってくれた。
話し合いも早々に終わり、三人を見送ろうと移動したのだが
「なんか増えてません?」
最初の記者の群れが三倍から四倍ほどに増えていた。
これは忠告も何もないだろう。
「はぁ・・・。 これ以上騒ぐなら騒音被害で警察のお世話になってもらいます、忠告を無視したのはそちらですし構いませんよね」
そう告げた後、家の方へと向き直り
レイズを呼んで交番まで呼びに行ってもらった。
今まではあまり不便に感じなかったが、これからの事を考えると俺も携帯を持った方がいいな。