専属
では早速・・・。
「俺が中学生の時、一緒に植えた花は何だったか。 答えられるか?」
実際に花は植えていない、ただのフェイントだ。
これを間違えずに答えられたのなら間違いなく本人だろう。
「花でしたっけ? ドングリだったと思ったんだけど・・・」
ほほう。
「やっぱり本人か、多少面影が残ってたから疑ってはいなかったけどね」
「あはは・・・。 ねえ、私からも一つ聞いていいかな?」
質問の予想はついているので、頷いてから答えた。
「苗字の事だろ? この家の養子になったんだよ」
「成程ね、やっぱりあの家はまだ・・・」
そこまで言葉にしたまま、みーちゃんは黙ってしまった。
「恐らく想像通りだよ、何も変わらなかった。 たまたま知り合ったお婆ちゃんと仲良くなってね、この家を引き継ぐことになった。 お婆ちゃんが亡くなってからしばらくしてダンジョンが発生したんだ」
「そんな理由があったんですね。 でも、さとし君があの家を離れられてよかったです!」
俺も心からよかったと思っている。
「ああ、ありがとう。 あの家には二度と戻らないさ」
空気が悪くなってしまった。
ここらで話題を切り替えよう。
「ところでさ、どうしてみーちゃんが家に?」
この質問に対し、みーちゃんは立ち上がり
「これでも私! 記者見習いなんですよ!」
と、答えた。
「ははっ、見習いなんだ」
うーん、そうか
みーちゃんが記者なら何とかなるかな?
「ねえ、みーちゃん。 あの人達って何しに来たかわかる?」
自分では心当たりが多すぎてよくわからない。
「ほら、今朝の逮捕された学生の件ですよ!」
ああ、やっぱりか。
「みーちゃん、あの記者達はどうあっても退く気は無さそうだよね・・・」
俺の心情を悟ったかのように、みーちゃんは苦笑いをしている。
「質問に答えたりするのは別に構わないんだ。 ただね、敷地内を車で荒らされたりさ。 ルカが頑張って耕した畑を人に踏み荒らされたりさ。 非常識な連中に教えることなんて何一つないんだよ」
これはみーちゃんにも言っている。
大方、上司にでも無理やり引っ張られてきたのだろうが
その様なやり方で訪問してきた人は客ではない。
「ねえ、みーちゃん。 他人に与えられただけの常識だけは絶対に信じちゃだめだよ」
「さとし君・・・。 ごめんなさい! 畑や轍の整地は私が責任をもって直します!」
でもきっと、これだけじゃ終わらない。
先に手を打たなければいけないのだ。
「わかった、それは俺も手伝うよ。 みーちゃんには別の方面でサポートしてほしいんだ」
ここからはただのお願いだ。
「別の方面・・・ですか?」
「そう、別の方面。 わかり易く言うなら、質問をまとめて持ってくる専属の記者になってくれないかな? 賑やかなのは好きだけどさ、うるさいのは嫌いなんだよ」